「買い物難民」という言葉を聞いたことがある人も多いだろう。近くに買い物できるところがなく、食料品や生活必需品の買い物に困る人々のことを指す。この買い物難民を支援する策はいくつか行われている。
「宅配サービス」「ネットスーパー」といった取り組みを行うスーパーもあるが、普及しているというニュースはあまり聞かない。セブン&アイでは、一部地域で移動販売サービス(トラックによる移動販売)を行っているが、やはりエリアは限られてしまっている。「買い物難民」への対応は、なかなかに難しいようだ。
そんななか、日本郵政とアップル、IBMが、「買い物難民対策」で業務提携したというニュースが今月頭に発表された。郵便局のネットワークを活用し、専用のタブレット端末を対象世帯に配布、そのタブレットを通して買い物支援などのサービスを実施する方針だ。
アップルはタブレット端末、IBMは専用に開発するアプリ、日本郵政は職員をそれぞれ提供する。それぞれの得意分野を活かすことになりそうで、興味深い。今年10月から実証実験を始めるという。
ほかにも、違った視点で買い物難民支援をしているビジネスがある。
■買い物を楽しくさせるロボット
介護の分野では、ロボット活用の研究が進んでいるが、買い物支援にもロボットを活用しようという動きがある。京都に本拠地を置く「知能ロボティクス研究所」では、バーチャル型ロボットやアンコンシャス型ロボット、ビジブル型ロボットの3種のロボットを連携させた買い物支援を研究している。
タブレットなどの端末上に表示されるバーチャル型ロボットが買い物情報を提示し、店舗に行くとアンコンシャス型ロボットが高齢者ユーザの位置とIDを計測し、ビジブル型ロボットがお客さまを出迎え、店内に案内して直接買い物をお手伝いする。
自分でお店に行くことはできるが、独り暮らしで毎日の生活に張りがない人に「出掛ける喜び、わくわく感」を感じてもらおうという試みのようだ。
■買い忘れをなくす買い物支援アプリ
お店も遠くない、買い物に行くのも不安はあまりないけれど…という人向けのややライトな買い物支援サービスもある。これはアプリを活用したもので、大日本印刷とDNPメディアクリエイトが開発した「DNP買い物支援アプリ おかいものメーモ!」である。
何を買うか忘れないためにメモをした経験は誰にでもあると思うが、これをアプリで行うというわけだ。リマインド機能があるほか、メモしたリストに合わせてセール情報なども送られてくる。GPS機能と連動しておくと、行動パターンを学習して「この品物は明日行く場所の近くで安く売っている」などと教えてくれるという。
買い物は、本来楽しいものであるはずだ。遠くまで行かなければならない、荷物が重い、買いたいものが買えない、そういったネガティブな思いを回避してくれるサービスやロボット、アプリは、幅広く普及すれば、救われる人も多くなるだろう。
(ライター・里田実彦)