関節への負担が少ないボール体操を指導する太藻ゆみこさん(撮影/大崎百紀)
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 がんばって歩きすぎたために、関節症を発症する人もいるようだ。ロコモティブシンドローム予防に大切なことは。AERA2023年9月18日号より。

【図表】「朝散歩のメリットと方法」「夕・夜散歩のメリットと注意点」はこちら

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 歩行や運動する際の注意点について「大事なのは姿勢です」と日本股関節研究振興財団の理事長で上馬整形外科クリニック(東京都世田谷区)院長の別府諸兄さんは強調する。

「女性は50歳を過ぎると骨粗鬆症になりやすく、脊柱が変形します。腰部脊柱管狭窄症や変形性膝関節症、O脚の方などなど、皆さん姿勢を含め、歩行能力が違ってきますから、まず姿勢チェックをすることです。円背(背)や頸部の垂れ下がり具合や、両側の大腿四頭筋の筋力、歩幅や歩隔を知る。日常的な活動量も考慮して、おのおのの体に負担のないように歩くことが大切です」

「歩く」にこだわらない

 歩くことにこだわらなくてもいいそうだ。上馬整形外科クリニックでは、医師の診察をまず行い、加齢による運動器の障害で移動機能が低下するロコモティブシンドローム(運動器症候群)の予防のためにバランスボールを使った体操を行っている。

「股関節を制するものは整形外科を制す、という言葉があります。中高年になると股関節が硬くなり可動域も狭くなります。それにより股関節だけでなく下肢全体の筋力が低下し、歩幅や歩隔、歩行速度にも影響を及ぼします。足が上がらなくなればおのずとすり足歩行になり、ちょっとした段差にもつまずき、転倒しやすくなります」

 同クリニックでボール体操を指導する太藻(たいそう)ゆみこさんは、歩く際の注意点をこう補足する。

「足の付け根からひざを伸ばし、骨盤を落とさないようにかかとをつけ歩きます。歩くペースは軽くおしゃべりができるような速さの『ニコニコペース』が良いでしょう」

 足を1歩前に出した時、よろけずにまっすぐ姿勢を保持するためにも、片足立ちトレーニングが必要という。

「股関節を含め、おなか周りにも筋肉をつけることが大切。みなさんには『自分のコルセットを作りましょう』と言っていますが、腹部を締めきゅっと力を入れると動きも軽やかになります。おなか周りが固くなれば足が出やすくなります」

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