一方で、

「そのときはパクられたと思ったが確証があるわけではない」

「『けいおん!』でパクられたので、自分の小説からは該当部分を削除して応募した」

「3つのシーン以外はパクられていない」

 とも述べた。

「けいおん」は青葉被告が小説を投稿する前のアニメ作品だ。つまり、青葉被告は2つの小説を京アニに送っていない段階で、また送ってもいない表現について「パクられた」と主張しているのだ。

 青葉被告は、2つの小説をインターネットの小説投稿サイトでも公開したというが、それも京都アニメーション大賞で落選した後だった。

 また、青葉被告は「パクった」のは、京アニの有名な女性監督だと名指した。

「LOVEです」

 被告人質問では弁護人から、

「監督には、『LIKE』か『LOVE』か」

 と問われ、

「LOVEです」

 と答え、恋愛関係にあったとした。

 しかし、その“女性監督”とは、匿名で投稿しているインターネットの掲示板「2ちゃんねる」上でやりとりした相手で、

「会ったこともない」

 と青葉被告は証言した。

 結局、今回の裁判では、事件の動機という「小説をパクられた」ことも、盗用したと名指しする女性監督についても、青葉被告の一方的な思い込みによるもので、裏付ける証拠も合理性もみられない。

 法廷での青葉被告の証言に、ある遺族の親族は怒りをこらえてこう話した。

「パクったというのが、あの程度。ネット掲示板の匿名の人を勝手に女性監督と思っていただけ……。怒りを通り越して、絶句する」

(AERA dot.編集部・今西憲之)

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