――現状の仕組みに課題はありませんか。
石油元売り会社を通じて値上がり幅を抑える現状の対策は短期間で練り上げた制度としてはよくできたものだと思います。とはいえ、問題がないかというと、そうは思いません。
もともとは昨年の急激な原油高と円安に対する「激変緩和措置」です。その名の通り、長引かせる性質のものではないはずです。本来なら、最初の見直しのタイミングだった昨年秋に「出口」を考えるべきでした。
激変緩和措置であるなら、当初の目的を果たしたら予定通りにやめるべきです。後述するように、対策によって得られる恩恵には差があり、措置が長引けば、その分だけ不公平な状態が続くことになります。
昨年秋から年明けにかけて原油価格は値下がり傾向にありました。対策をやめる判断をすることもできたはずです。
ところが、補助率を引き下げ始めた今年半ばから原油価格が上がり、外国為替市場では円安が進んだため、燃料油の価格は急騰しています。今のタイミングでは、そう簡単にはやめられないでしょう。
――恩恵の差とは。
現状の対策には、たくさん使う人ほどメリットが受けられるといった「逆進性」の課題があります。というのも、ガソリン使用量の単位あたりで一定額を補助する設計だからです。ガソリンを多く使えば、それだけ補助の額も大きくなる。一方で、車を使わない人にとって恩恵は少ない。
税負担の公平性を考えるなら、企業や世帯、個人あたりにつき一定額ずつ補助する「直接還元型」のような仕組みがよいでしょう。
そもそも、ガソリン価格には、ガソリン税など複数の税金がかかるのに加え、ガソリンの本体価格と税金の合計に、さらに消費税が上乗せされていることから「二重課税」といった指摘もあります。本来ならば、消費税の導入時や引き上げ時にガソリン税との間で調整を行っておくべきだったと思います。
(AERAdot.編集部・池田正史)