資源エネルギー庁によれば、9月4日時点のレギュラーガソリンの全国平均価格は1リットルあたり186.5円となり、前の週に比べて0.9円値上がりし、最高値を更新した。政府は9月末としていた価格を抑えるための補助金を年末まで延長することを決めたものの、補助が長期化することや、そのあり方には批判もある。石油市場に詳しい伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー代表の伊藤敏憲さんに聞いた。
――まずはガソリン税を下げるべきだという意見があります。
立憲民主党や国民民主党は政府に対し、ガソリン価格の平均が3カ月連続で1リットルあたり160円を超えた場合、価格に上乗せされている税金の一部(「特例税率」=約25円)の課税をやめる「トリガー条項」の凍結解除を求めています。
でも、それでは恩恵がおよぶのは一部に限られます。確かに、ガソリンや軽油はこの税金の分だけ安くなりますが、灯油や重油は対象外で、安くなりません。
灯油は寒冷地の暖房用燃料として欠かせません。重油は、産業用燃料や、漁業用の船舶、農業用のハウスの暖房用などに使われています。トリガー条項を解除するような支援の仕方では、こうした需要家に恩恵はおよばず、水産品や農産品の生産に影響する可能性もあります。
また、特例税率で得られる税収は一般財源として使われています。トリガー条項を解除すれば政府の税収が減ったり、予算そのものを組み換えたりする必要も生じます。すでに価格抑制対策が行われている局面で、そうした対応を取るのは現実的ではないでしょう。
さらに今後、原油高や円安が収まり、トリガー条項の発動条件を満たさなくなった時には税率が元に戻って価格が跳ね上がることになります。