汗をかく夏が終わり、肌が乾燥する季節へと向かっていきます。近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師は「乾燥肌の人は、肌が乾燥し始める秋から早めの保湿をおすすめします」と言います。
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暑い8月が終わり、9月になると徐々に暑さは和らぎ、涼しい日も増えてきます。外を少し歩いただけで肌がじっとりするようなこともなくなり、過ごしやすい季節へと変わっていきます。汗のベトベトから解放されるとともに、冬に向けて肌は乾燥へと向かっていきます。
皮脂欠乏性湿疹という病気があります。これは文字通り、肌の乾燥によりかゆみが生じ、その結果、かきむしって湿疹ができた状態をいいます。例年、12月や1月の寒い時期に多い皮膚病ですが、予防のためには秋からの保湿をすすめています。じっとりと汗がにじむことのない季節になれば、それは保湿のタイミングです。肌が乾燥し始める季節は秋です。
肌の乾燥を示すものとして「経表皮水分蒸散量(TEWL:Transepidermal Water Loss)」があります。これは、皮膚を通じての水分損失量を示す指標で、この値が高いほど肌の乾燥が進んでいることを示します。水分保持量が多ければ、肌は潤いを保ちやすく、TEWLを低く保つことが可能です。TEWLは特殊な機器を用いて計測するため、残念ながら一般の人が自分で数値を測ることはできません。しかし、私たちが研究室で確認したところ、乾燥肌の人はTEWLの数値が高く、保湿が習慣となっている人は数値が低い傾向にありました。つまり、継続的な保湿が肌の潤いには重要ということです。
肌の潤いに必要な成分として、「天然保湿因子(NMF:Natural Moisturizing Factor)」があります。NMFは、肌の角質層に存在し、水分を結びつける役割を持ちます。フィラグリンの分解から生成されるアミノ酸、さらにはミネラルや尿素、乳酸などの成分が含まれています。このNMFが減少すると、肌の水分保持能力が低下し、乾燥が進む原因となります。
フィラグリンは角質層を構成する重要なたんぱく質です。生まれもってフィラグリンの量が少ない人もおり、そういう人は乾燥肌でアトピー性皮膚炎になりやすい体質です。フィラグリンの量が少ないと、当然その産生物であるNMFも低下します。結果として、肌の水分量は低下します。