神津:何があっても帰れる場所で、どういう状態でも帰りたいなと思えるところ。逆にどういう状態でも迎えてあげられるところかな。
映らないものが大半
齊藤:僕は「サザエさん」のエンディングではないですけど、家族が平和の象徴みたいなもので、家族イコール家。家の輪郭が家族というイメージを持っています。2010年代くらいまでは、比較的、結婚や家庭を持つことがゴールという作品が多かったと思うんですが、ここ十数年はそこからが本当のドラマだという作品が多くなりました。
神津:そうかもしれませんね。齊藤監督が今回、映画化で得たことは何ですか。
齊藤:コロナ禍を経て感じたのは、映像業界はもちろん全ての業界が一度ストップしたような、脈が途切れた時間でした。俳優だけではなく映画館も機能性を失っている中で、多くの作品が中断したり白紙になったり。そんな状況でこの組が動き続けることは、映画界全体の大きな車輪が少しでも動き出す何かになるのではないかと思っています。
映画は映っているものだけではなく、映らないものが大半です。映ってない部分の人たちの生活と現場が動くことがつながっていることを、このタイミング、この作品だから強く認識できました。今、別の現場に俳優として入っていますが、アシスタントの人たちに非常に目がいくようになりました。コロナ禍のタイミングで映画作りをさせていただいたことは、今後の人生に大きな影響をいただいたと思います。
(フリーランス記者・坂口さゆり)
※AERA 2023年9月11日号