齊藤工が第13回小説現代長編新人賞受賞作『スイート・マイホーム』を映画化。家族に潜む恐怖を描き出した原作者の神津凛子と語り合った。AERA2023年9月11日号から。
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——神津凛子による小説『スイート・マイホーム』が齊藤工によって映画化された。舞台は極寒の地・長野。スポーツインストラクターの賢二(窪田正孝)は、寒がりな妻ひとみ(蓮佛美沙子)と娘のために念願のマイホームを購入。まほうの家を謳う新居はまさに暖かくて快適、なはずだったが……。
ジャンルは“人間”
齊藤工(以下、齊藤):原作を2019年に恐る恐る読みました。強烈な読書体験でした。この作品はミステリーやホラーといったジャンルで括ることはできない。あえて言うなら人間。何かが宿っている作品だと思いました。映画化するにあたっても、神がかった何かが一瞬でも宿ってほしいという願いは、一貫して持ち続けていました。
神津凛子(以下、神津):映像化の話は、この小説が本になって店頭に並び始めて間もなく、いただいたんです。夢のようでした。主人公が窪田正孝さんと聞いた時は、そもそもファンだったのでとてもうれしかったです(笑)。
齊藤:スポーツジムのトレーナーであり、神津先生も「グッドルッキング・ガイ」と書かれている説得力。美しい膜みたいなものをめくったところで、一種の“おぞまし”をしっかり持てる人となると、演じられる俳優は限られてくる。窪田さんはすごく自然な流れで浮かびました。キャスティングでは先生が背中を押してくださいました。コミュニケーションを取らせていただくたびに、「この方向で間違ってない」と進む力をもらい続けていたように思います。
神津:それは良かったです。私は完成映画を見て、自分が書いた小説が映画になったというよりも、「この話、知ってる!」というような感覚で没入していました。齊藤監督の映画には必ず、「このシーンを見るためにこの映画を見たのではないか」と思う場面があるので、本作でもそんな瞬間があるんだろうな、と期待していました。