今年4月に行われた神宮外苑再開発への抗議集会では、多数の樹木伐採を予定する計画に反対しながら先月亡くなった音楽家の坂本龍一さんの遺志を継ぐとして延べ6千人(主催者発表)が集まった(写真/朝日新聞社=2023年4月22日、東京・神宮外苑)
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 9月2日(土)に放送された桑田佳祐のラジオ番組「桑田佳祐のやさしい夜遊び」(TOKYO FM)でサザンオールスターズの新曲「Relay~杜の詩」が公開された。桑田自身による歌詞の朗読に続いてオンエアされたこの曲は、ノスタルジックな美しさを感じさせるメロディ、ゴスペル風のコーラス、〈未来の都市が空を塞いで良いの?〉といった歌詞が一つになったミディアムバラード。初オンエアの直後に桑田は、「Relay~杜の詩」が東京・明治神宮外苑の再開発を巡る問題を受け止めて作った曲であることを明言した。

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 放送のなかで桑田は、今年3月に逝去した坂本龍一が生前、神宮外苑再開発に反対していたことがこの問題に関心を持つきっかけの一つだったことに言及。さらに「神宮外苑というのは、サザンオールスターズもおかげさまで45年間ビクタースタジオで音楽を作ってきて、この界隈には大変思い入れがありまして。言い換えればふるさとのような場所なんでございまして」とコメントした。

 国立競技場にほど近い場所にあるビクタースタジオは、サザンオールスターズがデビュー以来、数多くの作品をレコーディングしてきた老舗スタジオ。2005年発表のアルバム『キラーストリート」は、このスタジオがある外苑西通りの通称“キラー通り”に由来している。しかもサザンは、やはり神宮外苑に近い青山学院大学の音楽サークルで結成されたバンドだ。それらを踏まえて「Relay~杜の詩」を聴けば、〈地球が病んで 未来を憂う時代に 身近な場所で何が起こってるんだ? ここに集って音楽(おと)を紡いだスタジオ(場所) 歌がある〉という歌詞に込めた桑田の思いの深さを実感してもらえるだろう。つまり桑田は、神宮外苑再開発の問題に対して私的な思いがあり、それを楽曲という形で発表したのだと思う。

 また「Relay~杜の詩」は、45周年イヤーを飾る“サザン2023三部作”の最後の楽曲。7月リリースの「盆ギリ恋歌」はお盆をテーマにした楽曲、そして8月リリースの「ニッポンの空」は、生まれ育った場所に対する感謝を歌ったナンバー。共通しているのは“故郷を大切にしたい”というメッセージであり、そのことも神宮外苑への思いと結びついたのだろう。

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