全人代が開幕する日の朝、国旗掲揚を見るための観光客が天安門の前に集まっていた/2023年3月5日
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 日中関係が急速に悪化している。深刻化する米中対立を受け緊張感が増すなか、東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出により、中国は日本産水産物の全面禁輸を発表、国内に衝撃が走った。隣の超大国との関係修復は急務だ。

 発売されたばかりの書籍『年代順だからきちんとわかる 中国史』(監修・岡本隆司/編集・かみゆ歴史編集部)は、古典文明から現代のグローバル戦略まで、中国の歴史と今を総ざらいすることができ、中国を理解するのに必読の1冊。現在の中国は、昨年10月の中国共産党大会後、習近平国家主席が異例の3期目を続投しているが、そもそも共産党、党大会など、いまさら聞けない基礎知識を巻末のキーワード集から紹介したい。

 中国のすべてを掌握する共産党の党員数は、2021年12月末時点で約9670万人。人口の約6~7%が党員ということになる。中国共産党規約によれば、「中国共産党は中国の労働者階級の前衛部隊」であるのだが、02年からは企業家の入党も認められるようになった。近年は大卒・短大卒以上の党員が増えており、過半数を占めている。

エリート層である約1億人の共産党党員の内訳。入党には紹介人の推薦や審査が必要(チャート制作 ウエイド)

 党員になると、特に公務員の場合、昇進に有利になるとされる。12年に総書記に就任した習近平は、入党要件の厳格化を打ち出したが、それでも当時から現在までの党員数は1000万人以上も増加した。党への入党申請は18歳以上から可能で、紹介人の推薦が必要となる。申請後は、党規約の学習や論文の提出等が求められ、その内容及び人柄などが審査され、合否が決定する。

 党員になった後は、党内での仕事ぶりが認められれば、出世を重ねていく。全共産党員のうち、党の方針を決定するとされる中央委員は約200人。党の指導部である政治局委員は25人、重要政策を決定する政治局常務委員はわずか7人。党方針は建前上は党大会などで決定することになっているが、実質的には政治局常務委員が握っている。

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「全人代」と「党大会」の政府との関係は