AERA 2023年9月4日号より
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 フリーランスや小規模事業者に厳しい、インボイス制度が始まろうとしている。業界模様はさまざま。深刻なケースもあるが、なぜか全体的には動きが鈍い。AERA 2023年9月4日号より。

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 深刻な事態やさまざまな不安をよそに、関係者たちには「様子見」気分が漂っている。

 免税事業者の課税事業者への登録は進んでいないようだ。国税庁の資料によると、3月末の時点でのそれは約50万件にとどまっていた。その後の状況から考えても、「免税事業者で登録したのは十数パーセント程度」(税理士・公認会計士の永井圭介氏)とする見方が支配的だ。

 課税事業者側の対応も大きな変化はなさそうだ。東京商工リサーチが8月上旬、5千社強を対象に行ったアンケートで、免税事業者との取引をどうするかを聞くと、「これまで通り」と答えた企業が55.5%を占め、「検討中」が32.7%で続いた。

 こうした事情を見越して、永井氏は最近、免税事業者に「当面の登録見送り」を勧めている。

「予想されていた免税事業者にとって厳しい事態は、どうやらすぐには現実になりそうもありません。『少なくとも3年間』は先送りしてもよさそうです。不安で登録してしまった人は、取り下げてもいいかもしれません。『取り下げ書』を出すだけなので、今からでも間に合います」

「少なくとも3年間」としたのは、「経過措置」の存在が大きく影響しているとみているからだ。

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