リモートワークが普及する中、あえて「リアルで会いたくなる場」を追求したオフィスが注目されている。AERA2023年8月28日号より。
【写真】森永製菓R&Dセンターの壁に飾られた過去の自社商品のパッケージ
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「コロナ禍以降の特徴として、メッセージ性のあるオフィスを志向する傾向が高まっています」
こう話すのは、オフィス移転のマネジメント業務を行う「オフィス・ラボ」(東京都中央区)の土井賢太郎オフィス環境事業本部長だ。ここ数年は、オフィスにグリーンを採り入れるのが流行(はや)りという。
「オフィスに生木を置いたり、フェイクグリーンを並べたり。視覚的にグリーンを採り入れるニーズが高まるにつれ、床やキャビネットも木目の入ったウッド調が好まれています」(土井さん)
究極ともいえるのが、隈研吾建築都市設計事務所がデザイン監修し、オフィス・ラボが設計・施工を担当した東急不動産(同渋谷区)だ。コンセプトは「森のようなオフィス」。グリーンがオフィスのあらゆる空間に配され、癒やし効果抜群だ。
「アート」の要素を採り入れるのも人気という。オフィス・ラボが昨年、施工した横浜市の「森永製菓R&Dセンター」の壁面には、過去に森永製菓が発売した商品のパッケージがオブジェのように飾られている。
「心の安らぐデザインや居心地の良い空間にいると、お互いの信頼や安心を感じ、帰属意識を高めることもできます。コロナ禍のリモートワークの浸透でバラバラになりかけた組織を立て直し、出社時に会社のアイデンティティーを感じられる要素をオフィス空間に反映させたい、と考える経営者が増えています」(土井さん)