整列する慶応の選手たち(撮影/写真映像部・松永卓也)

 この慶応の「同窓意識」はどこからくるのか。

 幼稚舎から大学までを慶応で過ごした、40代会社員の女性は、優勝後の「慶應義塾塾歌」斉唱シーンを見て、思わず涙がこぼれたという。

 女性はずっと、「自分は愛校心が薄いほう」と思っていた。内部進学組が集まる同窓会では、最後にみんなで肩を組み、「若き血」を歌う。そんな周囲のことを、女性は、「みんな母校愛強いよー」と一歩引いて見ていたという。実際、同窓会にはほとんど行かず、最近まで同級生のグループラインにも入っていなかった。

 今回の甲子園も、リアルタイムで試合を見たのは決勝戦だけだ。試合中は、仕事をしながら、時おり横目でテレビを追う程度。正直、試合の展開よりも、目の前のパソコンに集中していた。けれど、ある瞬間にパチリとスイッチが入ってしまった。勝利をつかんだ後輩たちが歌う「塾歌」がテレビから流れてきたのだ。気づけば、一緒にメロディーを口ずさんでいた。

「全国の人が見てくれる大舞台で慶応が活躍するって、今まであんまり記憶がなくて。でも、彼らがこうして機会を与えてくれて、卒業ぶりに塾歌を聞いたら、自然と……。ああ、結局私のなかには慶応が刻み込まれてるんだなって、そう思った途端にうるうる来て。感動して泣くなんて久しくなかったのに、心の潤いが呼び起こされました」

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