慶応(神奈川)の丸田湊斗選手(撮影=加藤夏子)
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 バックスクリーンの大会旗が左翼側から右翼側へ、激しくはためく。
 決勝の風は、いつもの浜風とは違った。
 

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 1回表、慶応の丸田湊斗が放った打球が、その風をとらえる。

「今日は風が逆向きだったので、ある程度、打球が飛べば『行くだろうな』と思っていました。春の仙台育英との練習試合で、ストレートをとらえてスリーベースヒットを打っていたんです。だから、今日の決勝ではスライダーをイメージして打席に入りました。初球はスライダーを空振りしたんですけど、良いイメージで振れた。一球目をしっかりと振れたことが、ホームランにつながったと思います」

 2ボール2ストライクからの5球目。仙台育英の先発マウンドに上がった湯田統真が投じたスライダーを右翼スタンドへ運ぶ、先制アーチだ。夏の甲子園では、史上初となる決勝での先頭打者ホームランだった。

「僕自身、公式戦では1本もホームランを打っていなかったので、今日の価値あるホームランを打つために、(公式戦初本塁打を)取っておいたのかなと思います」
 

 丸田の一発が導火線となり、慶応カラーで覆い尽くされる三塁側アルプスを中心とした大応援が甲子園球場を呑み込んだ。陸の王者の圧力が、夏連覇を狙う仙台育英に襲いかかる。森林貴彦監督は言うのだ。

「実力だけではなく、プラスアルファのものを引き出してもらえる応援や、球場の雰囲気がなければ、仙台育英さんには立ち向かえない、そして勝てないと思っていました。先頭打者ホームランは考えてもいなかったのですが、最高の立ち上がりになったし、チームに勇気を与えました。丸田のホームランは、球場を巻き込む素晴らしい一打だった」

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