1923(大正12)年9月1日、首都圏を襲った関東大震災から、今年で100年になる。東京に大地震がいま襲うと、被害が大きいところはどこか。東京都が3月に公開した「東京被害想定マップ」をもとにしつつ、専門家にも聞いた。AERA 2023年8月28日号より。
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「火事だぁ!」
消火器を持った幼い子どもたちが、大声で叫ぶと防災訓練車に向け一斉に放水した。
7月19日午前、東京都荒川区のJR南千住駅近くの広場で防災訓練が行われた。集まったのは、近くの保育園児たち。荒川消防署の署員から、消火器の使い方と火災に気がついたら大声で「火事だ」と周囲に伝えることが大切と教わると、訓練用の水を入れた消火器を使って狙いを定め、水を放った。
「楽しかった」
初めて消火器を使ったという保育園の年中組の女の子(4)は、笑顔で話した。訓練は、関東大震災から今年で100年になるのを機に荒川消防署が開き、買い物途中の親子らも参加した。
初期消火が最も重要に
同署の百田靖稔(やすとし)さんは言う。
「地震では火災が発生することが想定されており、初期消火が最も重要。しかも、荒川区は消防車が入れない狭い道が少なくありません。初期消火可能な火災であれば、早期の消火で燃え広がりを防ぐことができます。お子さんにも、小さいうちから防災意識を持ってほしい」
ちょうど100年前の9月1日、関東大震災は起きた。地震の規模を示すマグニチュード(M)は7.9。発生時刻が昼食時と重なり、各地で同時多発的に出火。台風通過に伴う強い南風にあおられ、東京は焼け野原となった。死者・行方不明者は10万人を超えた。
首都圏に未曽有の被害をもたらした大地震から丸1世紀。今また首都圏を襲うとされるのが「首都直下地震」だ。今後30年以内に70%の確率で起きるとされている。
地図を見てほしい。
東京都が3月に公開した「東京被害想定マップ」を使い、首都直下地震の中でも被害が最大とされる、「都心南部直下地震」(冬の夕方、風速毎秒8メートル)で想定される震度の分布を記したものだ。M7.3。東京23区の約6割が震度6強以上の揺れに見舞われ、東部の江東区、江戸川区、荒川区などを震度7の特に激しい揺れが襲う。