山口は、浅島を後継の編集長にすると、局長に就任した。局長だった麻生は常務に昇進する。

 浅島によれば、2022年下半期からさらに有料デジタル版の契約者数を5000人うわのせして、現在合計で3万5000人。紙とあわせると10万の大台が見えてきたのだという。

 浅島は記者としても忖度のない記事を書くことでも有名で、某大企業の記事を書いたときには、「浅島を代えろ」と社の上層部に広報部がねじ込んできたこともあった。

 浅島がそういう話があったと間接的に知ったのはずいぶん後のこと、今も経営陣からは何も言われていないという。

 そうした忖度のない経済ジャーナリズムこそがダイヤモンドにしかできないこと、それがサブスクの読者獲得につながり、経営的な繁栄にもつながり、ジャーナリズム追求の素地になる。

 最近浅島が嬉しかったこと。NewsPicksに脱藩したくだんの三人から、編集長就任のお祝いとして花が届いたことだ。

 長かったお荷物の時代が過ぎ去り、新しい時代を自分たちは切り開いたことを、その大輪のひまわりたちが祝福してくれているようだった。

下山進(しもやま・すすむ)/ノンフィクション作家・上智大学新聞学科非常勤講師。メディア業界の構造変化や興廃を、綿密な取材をもとに鮮やかに描き、メディアのあるべき姿について発信してきた。主な著書に『2050年のメディア』(文春文庫)など。

AERA 2023年8月28日号

著者プロフィールを見る
下山進

下山進

1993年コロンビア大学ジャーナリズム・スクール国際報道上級課程修了。文藝春秋で長くノンフィクションの編集者をつとめた。聖心女子大学現代教養学部非常勤講師。2018年より、慶應義塾大学総合政策学部特別招聘教授として「2050年のメディア」をテーマにした調査型の講座を開講、その調査の成果を翌年『2050年のメディア』(文藝春秋、2019年)として上梓した。著書に『アメリカ・ジャーナリズム』(丸善、1995年)、『勝負の分かれ目』(KADOKAWA、2002年)、『アルツハイマー征服』(KADOKAWA、2021年)、『2050年のジャーナリスト』(毎日新聞出版、2021年)。標準療法以降のがんの治療法の開発史『がん征服』(新潮社)が発売になった。元上智大新聞学科非常勤講師。

下山進の記事一覧はこちら