このデジタル有料版「ダイヤモンド・プレミアム」は前号で紹介したように、2022年下半期で3万人の有料会員を獲得するようになるのだが、その成功の理由のひとつに新聞社や他の週刊誌がおちいっているような「他部局との利害の衝突」を組織を変えることでなくしていた、ということがある。

 統合編集部をつくったことの他、たとえば紙の定期購読については、営業部から権限を移管し、麻生がみるようにした。デジタル有料版は、月額プラン、年額プラン、3年プランとある。もし紙の週刊ダイヤモンドの定期購読を営業部がみるようになっていると、ここでデジタル有料版と利害の衝突が起きる。新聞社がなかなかデジタル版オンリーの販売にふみきれないのも、紙の新聞を販売局が売っている以上、デジタル版はそこから読者を奪うものとみられてしまうからだ。ところが、ダイヤモンド社では、紙の定期購読とデジタル有料版の購読を同じレポートラインにのせることで、その利害対立を解消したのだった。これで、たとえば、デジタル有料版の価格政策を自由に麻生が行うことができた。

 社長の石田は「ダイヤモンド・プレミアムは週刊ダイヤモンドの有料版ではなく、ダイヤモンド社全体のデジタル有料版なんだ」と私に語ったが、ローンチの時から、『嫌われる勇気』や『もしドラ』などのベストセラー単行本を電子書籍で読めるようにしたのは、その最たるものだろう。ダイヤモンド社の強みであった書籍も、サブスクのコンテンツに加わったのである。

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