親子で富士山に登りたい――。

【すごい人は補充していた】80歳エベレスト登頂を支えた男性ホルモン

 記者がかつて富士登山専門誌の編集を担当していたころ、子どもを持つ読者や知人から何度もそんな声を聞いた。「幼稚園児と一緒に登った」という報告を受けたこともある。

富士山の吉田・須走ルート山頂で日の出を待つ大勢の登山者(今シーズンの写真ではありません)/撮影 川口 穣
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富士山の吉田・須走ルート山頂で日の出を待つ大勢の登山者(今シーズンの写真ではありません)/ 撮影 川口 穣

 実際、富士山に登る小学生前後の子は決して珍しくない。富士山はルート中に危険個所はほとんどなく、体力的にも山登りの経験があって歩きなれた子ならば、なんとかこなせるレベルだろう。親子で日本の最高地点を目指すのは、夏の大きな思い出になる。

ただ、子どもの富士登山にはリスクもある。最大の壁は「標高」だ。

 今年7月17日には、富士山を登山中だった5歳の男の子が「胸の痛みを訴えて嘔吐した」として母親から救助要請があり、静岡県警遭難救助隊が救助した。男の子は母親、姉、兄と4人で登山中だったという。報道によると子どもは下山後に体調が回復しており、高山病だったとみられる。

 標高が高くなると空気の密度が薄くなり、一度の呼吸で得られる酸素量が少なくなる。その環境に体が適応できず、頭痛や倦怠感などが現れるのが高山病だ。重症化すると肺水腫や脳浮腫を併発し、命にかかわることもある。

富士山の最高地点・剣ヶ峰(3776メートル)を目指す人の列(今シーズンの写真ではありません)/撮影 川口 穣

 毎年、富士山富士宮ルート八合目(標高3250メートル)の診療所で登山者の診療にあたる国際山岳医の大城和恵医師はこう警鐘を鳴らす。

「安心して富士山に挑戦できるのは学童後半(10歳くらい)からでしょう。それより小さいと登れないとは言いませんが、連れて行く大人に十分な知識と経験が欠かせませんし、そもそも子どもが本当に楽しいのか疑問です」

 登山医学の世界では、標高1500メートル以上を「高所」と呼び、標高が上がるほど高山病発症のリスクが高まる。富士山の標高は3776メートル。登山口になる五合目でも標高2300メートルほど(主要ルートである吉田ルート、富士宮ルートの場合)で、大人も含めた富士山登山者の3割が高山病になるとの報告もある。

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元気だからと一気に登らないで