8月1日、朝日カルチャーセンターの講座で、鈴木敏夫プロデューサーと朝日新聞文化部の太田啓之記者とのトークショーが行われた(写真:朝日カルチャーセンターの講座から)
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 公開中の映画「君たちはどう生きるか」が大きな話題となっている。宣伝なしの手法や賛否分かれる観客の反応について、スタジオジブリ代表取締役プロデューサー・鈴木敏夫さんが答えた。AERA 2023年8月14-21日合併号から。

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太田啓之(朝日新聞記者、聞き手):「君たちはどう生きるか」、強烈なインパクトでした。私、3回観て、この後も4回目を観ようと思っているんですが。

鈴木敏夫 ええっ、3回も?! それはありがとうございます。たくさんお金を使っていただいて……(笑)。

太田:今回は宣伝一切なし、という方法も話題になりましたよね。

鈴木:この宣伝方法を思いついたのは、正確に言うと6年前なんです。どこかに書いたんだけど、まず決めたのが製作委員会方式をやめること。そして大宣伝方式をやらない。僕自身、映画を公開するのに宣伝がいき過ぎているという思いはずっとあったんです。一度その状況をセーブして、まっさらな状態で映画を観るということをしたかった。それができるなら、宮崎駿の映画だな、と。

太田:宮崎監督はなんとおっしゃっていたんですか?

鈴木:もともと宣伝の多さに辟易していたのは宮さん(宮崎駿監督)なんですよ。「だったら一度、無い状態にしてみましょう」とやってみて、彼も喜んでくれているんだろうと思ったんですが、実際「宣伝やらない」と言ったら「……ホントにやらないの?」って。

太田:ははは(笑)。

鈴木:誰よりも心配しだした。僕の前では、「鈴木さんの丁半博打にオレは賭ける」みたいに言っていたけど、僕のいないところでは「ホントに宣伝やってないんだよ」ってこぼしていたみたいです。ただ結果として、たくさんの方が観に来てくださった。宮さんも喜んでいると思います。

観客の評価は真っ二つ

太田:好調な出足をみると、「予備知識なくまっさらなままで見たい」という人が多かったんだと思います。しかし、率直に言って評価は真っ二つなんですよね。

鈴木:え、そうなんですか。僕、全然そういう評価を見ていないから。

太田:僕も1回目は正直に言って、「わけがわからない」。

鈴木:おもしろい話をしましょう。公開後に僕の家に若い人たちが集まったんです。彼らは「これはもう一回観て内容を正確に理解しないと」と口々に言う。そのなかで観てきたばかりの僕の11歳の孫が、「なんでもう一度観たいの?」と、ダーッと映画の内容を話しだした。しかもセリフも全部言える。それも一人だけじゃないんですよ。別の女の子も頭から内容もセリフも全部言える。

太田:すごい……。

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