皮膚科では、顔に湿疹やニキビがある患者さんから「化粧はやめといたほうがいいですよね?」という質問をよく受けるそうです。「化粧をしてもいいですか?」という聞かれ方ではなく、化粧をしないことが前提の質問が飛んでくることについて、近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師は「化粧は肌によくないという共通認識がある」と語ります。では、本当に化粧はよくないのか、大塚医師が解説します。

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 仕事が忙しいときやストレスがあるときは、肌の調子が悪くなります。ニキビや吹き出物が多く出るなど、ときには湿疹が顔に出現することがあります。肌が弱い人やもともとアトピー性皮膚炎などがある人は、顔にできる湿疹は大きな悩みの一つでしょう。特に女性は化粧をする機会が多いことから、顔の肌の状態によっては朝から憂鬱な一日を過ごすことになるかもしれません。

 
※写真はイメージです(写真/Getty Images)

 私が専門とする皮膚科には、顔に湿疹がある患者さんが多く受診されます。そういう人からよく受ける質問の一つが「化粧はやめといたほうがいいですよね?」という内容です。興味深いのは、「化粧をしてもいいですか?」という聞かれ方をするのではなく、「化粧はやめといたほうがいいですよね?」と、化粧をしないことが前提の質問が飛んでくることです。みなさんの共通認識として、化粧は肌によくない、ということがあるのでしょう。

 では、顔に湿疹があるときは本当に化粧はしないほうがいいのでしょうか? 結論から言うと、顔に湿疹があってもいくつか注意点を守れば化粧はできます。今日はそのポイントをお伝えしたいと思います。

 まず、当たり前のことと感じるかもしれませんが、湿疹部位には保湿剤と薬以外は塗らない、ということが一つ目のポイントです。頬に湿疹がある場合、そこに化粧をしてしまうと湿疹がさらに悪化するリスクがあります。化粧品に含まれているアルコールは、湿疹部位にしみますし、香料はかぶれの原因になります。湿疹があるということは、肌のバリア機能が破綻していることを意味します。健康な肌であれば守ることができる外からの刺激も、湿疹部位は過敏になっています。そのため、湿疹部位の化粧はなるべく避け、保湿はしたほうがいいのですが、香料やパラベンなどが含まれるものはやめましょう。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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