事件現場となったホテル。ススキノの歓楽街からほど近い場所にある=2023年7月5日、札幌市中央区

 札幌市の歓楽街・ススキノのホテルで会社員男性の遺体が首を切断された状態で見つかった事件。娘と両親の親子3人が死体遺棄、死体損壊などの疑いで逮捕されて1週間ほどが経ったが、いまだ動機はおろか、認否についても明らかになっていない。男性の頭部を自宅に置いたまま3週間以上生活するなど、通常では理解できない謎がある。

【写真】頭部を保管していた容疑者一家の自宅はこちら

 この事件で逮捕されたのは、いずれも札幌市厚別区の無職田村瑠奈容疑者(29)、父で精神科医の修容疑者(59)、母の浩子容疑者(60)の家族3人。共謀して7月1日深夜から2日未明にかけ、札幌市・ススキノのホテルで、死亡した男性の首を切断し、頭部を自宅まで運んで遺棄した疑いが持たれている。

 一方、遺体は、北海道恵庭市の会社員男性(62)で、道警の司法解剖の結果、刺し傷が致命傷となり、殺害後に首を切断されたとみられている。道警が3容疑者の自宅を捜索したところ、頭部が見つかった。

 これまでの調べでわかっているのは、7月1日、札幌市のディスコで開かれていたイベントに会社員男性は参加していた。その後、男性は午後10時半ごろに瑠奈容疑者とみられる人物と合流し、ホテルに入った後、殺害されたとみられている。

 翌2日の午前2時ごろにホテルのフロントに「先に出ます」と内線電話があり、瑠奈容疑者とみられる人物が一人でスーツケースを引いてホテルを出て、修容疑者が車で迎えにくると、それに乗って走り去った。その後、午後にホテルの従業員が会社員男性の遺体を浴槽で発見した。

①計画的な犯行後、ずさんすぎる頭部の保管

 遺体が発見された当初、報道されたのは、首が切断されるという猟奇的な犯行▽会社員男性は女装してイベントに参加▽住まいは札幌市から40キロ離れた場所で、仕事は会社員▽ホテルに入っていった人物の性別は未確認▽足取りが不明――といった情報などで、様々な臆測を呼んだ。

 事件が大きく動いたのは24日。瑠奈容疑者と修容疑者が逮捕されたという一報が流れた。世間を驚かせたのは、2人が親子で父は精神科医。そして、翌25日には母の浩子容疑者も同じ容疑で逮捕され、家族3人による犯行の疑いがあることが明らかになったときだ。さらに道警が3人の自宅を家宅捜索し、浴槽から会社員男性の頭部が見つかったとのニュースが流れると、SNSなどでも大きく騒がれ、さらに大きな注目を浴びた。

送検される田村瑠奈容疑者を乗せた警察車両=2023年7月25日、札幌市中央区の北海道警本部
次のページ
入念な準備の形跡が見える半面……