元神奈川県警刑事の小川泰平氏(画像=本人提供)

――しかし、安田さんの死は事件化されませんでした。

 事件後、安田さんの血だらけの衣服などの証拠品がご遺族に返されていることを踏まえると、警察は、これ以上の捜査は必要ない、つまり自殺と判断したと見て間違いないと思います。

 では、なぜきちんと鑑識もやらないで、自殺の扱いにしたのか。佐藤さんは「俺のほうからは言えないですけど、ちょっとミスっちゃったのかな」とうまく濁していましたけど、私はなにがしかの力や忖度が働いたんじゃないかと思います。だって、佐藤さんも「刑事が(現場に)行けば、自殺には見えない」とまで言っているのに、ありえないミスじゃないですか。

 ここで整理しておかなきゃいけないのが、事件が起きて最初に捜査が行われた2006年の段階では、木原さんが関与した可能性はほぼゼロということです。当時、木原さんはまだ議員1年生で影響力は大きくないし、そもそもX子さんと結婚しているわけでもない。警察への圧力という視点で考えるのであれば、2006年時点と、その後再調査が行われた2018年時点で、それぞれ別の何かが働いたと見るべきです。

――一度自殺として処理された案件が、なぜ再調査されたのでしょうか?

 事件性を示す、かなりの有力な情報が持ちこまれたからでしょう。初めに再調査に乗り出した「警視庁捜査一課特命捜査対策室特命捜査第一係」は、主に未解決の殺人事件を再捜査するチーム。年に数えきれないほど起きる自殺案件に対して、「なんとなく気になる」程度で勝手に動くことはありません。

 しかも、相手は大物政治家の妻ですよ。10月には、X子さんの別宅や実家を家宅捜索していますが、慎重に慎重を重ねた捜査の末、警視総監や警察庁長官、東京地検の刑事部長などとも協議したうえで、かなりの覚悟と確証をもって踏み切ったと思います。

 なかには、「もし木原さんが圧力をかけたのなら、ガサの段階で阻止していたはずだ」と思う人もいるようですが、ガサ前に事前通告するバカはいません。いきなり警察がやってきて、木原さんは驚いたでしょうね。

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木原氏クラスが「もみ消せ」と言ってもできない