写真はイメージです(Getty Images)
この記事の写真をすべて見る

 海鮮丼専門店のはずなのに、同じ住所から「からあげ専門店」「タコライス専門店」など複数の専門店としてサービスを提供していた。そんな事例がいま、コロナ禍で急増したフードデリバリーサービスで横行しているという。「ゴーストレストラン」と呼ばれる形態を“うまく”利用しているケースも多いようだ。

*  *  *

 「フードデリバリーの“専門店”で海鮮丼を頼んだら、見たことのある居酒屋の名前が見えて……」

 東京都在住で広告業界に勤める男性(28)が深夜、フードデリバリーのサイトから店を探していたときのこと。
 
「深夜はそこまでお店はやっていなくて、コンビニや大手チェーン店が注文を受け付けているのが目立ちました。疲れていたので、多少高めでもちょっといいご飯を食べたいと思って、スマホをずっとスクロールしていました。そのうち『海鮮丼専門店』というのが出てきたので、専門店という言葉に釣られてすぐ注文しました。配達料込みで2千円ほどでした」
 
 注文から約30分が過ぎたころ、部屋のインターホンが鳴り、配達員が海鮮丼を届けにきた。丼の容器は黒のプラスチックで、ポリ袋に入れられていた。袋を開けると……。
 
「見たことのある居酒屋のロゴが、割りばし入れの紙に印字されていました。家から2キロくらい離れた所にある居酒屋で、何度か目の前を通ったことがあります。大手グルメサイトの評価はイマイチで、入ったことはありません」
 
 男性が、注文した店のアプリ内で注文履歴を確認し、配送元を見つけると、その居酒屋の住所と同じだった。
 
「海鮮丼に入っていたマグロの赤みは黒ずんで、サーモンの刺し身はほんとに薄い。その店だとわかっていたら絶対に注文はしなかったです。あんな海鮮丼で2千円はぼったくりです」
 
 男性は不信に思って、さらにアプリ内を調べたところ、
 
「ほかにもその住所で、油そば専門店や唐揚げ専門店、タコライス専門店など五つ以上の専門店を名乗り、営業していたのを確認しました。だまされたというか、こんなことがアプリ上で当たり前にまかり通っているのは非常に残念です」

次のページ
ゴーストレストランの需要の高まり