松下 ありがとうございます。僕をはじめ、多くの若手が「おじき」みたいになりたいと思ってきました。僕がプライベートで「おじき」と呼ばせてもらうようになったのは、ずいぶん前ですね。
藤木 そうだよね。僕が蜷川幸雄さんの舞台に出させてもらっていた時、蜷川さんが立ち上げた若手俳優集団「さいたまネクスト・シアター」のメンバーと仲良くなって。彼らが「おじき」と呼んでくれたのが最初だね。
松下 ある時、ネクストの中のひとりが、藤木さんと飲んでると連絡をくれたんです。藤木さんと飲むなんて、めちゃくちゃ羨ましい案件だったので「すぐ行く!」と。そうしたら、みんな「おじき」と呼んでいて、なにその距離の縮め方! ずるっ!と(笑)。僕も「おじき」と呼ばせてもらっていいですか?と聞いたのが始まりですね。
藤木 俺は「おじき」で俺の奥さんのことは「姉御」、息子は「若」と呼んでくれている。もともと「おじき」なんてキャラじゃないのに、そうやって親しみを持って接してくれることがうれしいよ(笑)。
松下 おじきとは17年に舞台「魔都夜曲」で共演させてもらいました。それ以降は、飲みに行かせてもらったり、ご自宅にお招きいただいたりして。いつも優しくて、おじきみたいになりたいという気持ちがますます高まっています。いつも爽やかでかっこよくて、本当に憧れています。
藤木 もう50歳だけどね。
松下 全然変わらないですよね。何か心境に変化はありましたか?
藤木 この年になれば、誕生日がきたからといって何でもないと思っていたけど、区切りっていうか、生まれてから50年の毎日を思ったし、この先50年のことも考えて、感慨深かった。50歳記念で髪に色を入れたんだ。
松下 それは緑ですか?
藤木 青を入れたんだよね。還暦は赤、百寿は白。じゃあ50歳は何色なのかと調べたら、還暦より前のお祝いは早寿で、色が青だとわかって。
松下 かっこいいです。いま、事務所内で僕より下の世代との関わりはありますか?
藤木 最近は、あまりないね。
松下 僕は36歳になりましたが、たまに事務所へ行くと、若い子が挨拶してくれるんです。中には10代の子もいる。人数が多くて、なかなか顔を覚えられないし、会った時にひとりひとりと深い話はできないけれど、ひとつ決めているのは、笑顔で「おつかれさまです」と言おうと。それは、おじきが教えてくれました。
藤木 そうだっけ?
松下 はい。出会ったばかりの頃、おじきが常に笑顔で接してくれたので。
藤木 ああ、なるほどね。ごまかし方を学んだのか(笑)。
松下 あれは、ごまかしだったんですか?(笑)。いつか僕にも後輩ができたら、同じように笑顔で接しようと思ってきたことを、いま実践しています。
○ふじき・なおひと/1972年生まれ、千葉県出身。早大在学中に映画「花より男子」で俳優デビュー。7月29日から舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」にハリー・ポッター役で出演予定。TOKYO FM「SPORTS BEAT」メインパーソナリティー
○まつした・こうへい/1987年生まれ、東京都出身。3rdシングル「ノンフィクション」が発売中。8~9月、こまつ座40周年(第2弾)第147回公演「闇に咲く花」に出演予定。9月、映画「ミステリと言う勿れ」公開予定
(構成/編集部・古田真梨子)
※この対談の続き(全4回)は下記に掲載しています。
第2回:AERA 7月10日号(7月3日発売)
第3回:AERA 7月17日増大号(7月10日発売)
第4回:AERA 7月24日号(7月18日発売)