写真はイメージ(GettyImages)
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あらゆる業界でマニュアル化が積極的に進められている。業務効率化やミスの防止のため、今や企業にとっては必須の武器となっている。メリットが大きい半面、マニュアルに頼ることには大きな落とし穴があることを知っておく必要がある。今回は、マニュアル化に伴うリスクについて考えてみたい。(心理学博士 MP人間科学研究所代表 榎本博明)

仕事のマニュアル化により、個人の特性によるムラを防げる


 マニュアル化のメリットは、仕事に最低限必要とされる程度の質が担保されるところにある。習熟している人物なら自ら考えて適切な動きが取れるだろうが、まだ慣れない人物は、自ら考えるように言われても、どう動いたらよいか分からない。そんなときに威力を発揮するのがマニュアルだ。


 臨時アルバイトや派遣社員など、その職場の仕事にまだ不慣れな人材をすぐに戦力として活用するには、マニュアル化が必要不可欠だ。仕事に習熟しているか、まだ慣れていないかということだけでなく、人による性格の違いやそれまでの生活習慣の違いも仕事に質の差をもたらす。

 たとえば、レジでの顧客対応でも、気持ちよくあいさつができる者もいれば、あいさつの言葉がスムーズに出ない者もいる。客からの電話での問い合わせに対しても、丁寧な対応ができる者もいれば、ぶっきらぼうな対応をしてしまう者もいる。受付で無理な要求をする客に対して、相手の気持ちを配慮して傷つけないような対応ができる者もいれば、非難がましい言い方をしてしまう者もいる。

 よく気がつく人とあまり気がつかない人。他人への配慮が得意な人と苦手な人。自分が発する言葉が相手の気持ちに与える影響を的確に想像できる人と、そのようなことにまったく無頓着な人。仕事の丁寧な人と雑な人。

 そうした個人の特性の違いによる仕事のムラを最小限にするためには、マニュアルがとても役に立つ。マニュアルがあることで、個人の特性の違いにフタをして、一律の対応ができるようになる。

 そのため、あらゆる分野で仕事の手順や顧客対応などのマニュアル化が進められている。ヒューマンエラーによる事故を防ぐのにもマニュアルは威力を発揮しているが、接客業などでは、SNSでクレームが拡散するおそれがあるため、クレーム防止のため、応対方法などのマニュアル化が推し進められている。

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効率性の追求が創意工夫の余地を奪う