「ビジネスパーソンのためのDX基礎講座」を担当する宗平順己教授は「日本ではデジタル化で効率化やコストカットをするのがDXの目的と誤解されやすいのですが、本来はAIやIoTを使って顧客に新しい価値を提供し、そのことで企業としてどう生き残っていくかを考えるためにあります」と語る。
経済産業省のIT政策実施機関である独立行政法人情報処理推進機構は、22年12月にまとめた「デジタルスキル標準」で、ビジネスパーソンが身につけるべき能力・スキルを示している。
「いわば国の方針ですべての社員がDXについて知ることが求められているのです。デジタル技術に詳しい専門家は、その企業が顧客に何を望まれているかを知りません。ビジネスの最前線にいる人たちが、AIやIoTで何ができるかを自ら知る必要があります。これは今、日本全体に突きつけられている課題でもあります」と宗平教授は強調する。
「すぐに役立ち、学問的にも正しいことを分かりやすく伝えるようにしています。AIにしても、すぐに使えるものは世の中にたくさんあります。DXをもっと身近なものととらえて、どう活用するかを考え、得たものを持ち帰ってもらえればと思います」(宗平教授)
西宮商工会議所中小企業相談所所長の元辻昌典さんは、地元企業の経営を支援する機関としてまず自らが知識やスキルを高めようと、このDX基礎講座で学ぶことにした。「DXは顧客起点の価値創造」という考え方に特に共感したという。
「技術についての解説ではなく、DXの考え方の説明が中心で期待通りの講座でした。学ぶ情報は大変多く、またさまざまな業種の人が受講しています。職場研修とは異なり、いろいろな目的を持つ人たちと幅広い内容をじっくり学べて、自分自身をアップデートできました。社会人が学び直しをする意義を改めて感じます。中小企業支援のヒントを得たので、これから職場で共有していきます」
「ムコノアプラス」では、オンラインの対面指導を受けることもできる。受講生や修了した人たちが交流するイベントを開催し、自習室や大学の付属図書館が利用できるというメリットもある。