文学賞が、作家の寿命の長短を左右する――。今月19日に選考会が行われた芥川賞・直木賞に関する興味深い研究結果がある。芥川賞受賞者は、受賞しなかった候補者と比較して余命が1・7歳延び、直木賞受賞者は逆に余命が5・3年縮まるというのだ。
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研究は、大阪大学感染症総合教育研究拠点の大竹文雄・特任教授(行動経済学)と、当時の指導学生で大学院生だった佐々木周作さん(現・同准教授)、黒川博文さん(現・関西学院大学経済学部准教授)によって行われた。
大竹氏らは、第一回から記録を参照し、両賞の受賞者と落選した候補者の中から、戦死などをした人を除く男性の平均寿命を調べた。対象となったのは、芥川賞では受賞者109人、候補者254人の計363人、直木賞では同125人、同220人の計345人。そこから上述のような結果が得られたのだという。
なぜこのような一風変わった研究を行おうと思ったのだろうか。きっかけは、2015年1月、お笑い芸人で作家の又吉直樹さんが、『火花』で芥川賞を受賞したことだった。当時、大竹氏は「オイコノミア」(NHKEテレ)というテレビ番組で又吉さんと共演しており、同番組で、受賞を受けて、経済学の視点から「文学」を考えるという内容を放送することになったのだという。そこで大竹氏が考えたのが芥川賞・直木賞の受賞と寿命との関係だった。
賞の受賞やスポーツ大会での優勝と寿命の関係を調べた研究は当時からあり、アカデミー賞やノーベル賞などの受賞者やオリンピックの金メダルリストを対象とした研究結果が出ていたという。
「芥川賞と直木賞で同様の調査をしたら面白い結果が出るのでは、と思ったんです」(大竹氏)