こうした結果を受け、杉江医師は、低温サウナ浴を老年症候群やフレイル状態にある運動をおこなうことが困難もしくは推奨できない高齢者の運動代替療法として積極的に採り入れるようになったという。

 虚弱状態のシニアでも無理なく安全に利用できるのが低温サウナ浴の利点だが、注意点もある。サウナ浴の当日、37度以上の発熱のほか、動悸、めまい、息苦しさ、胸が痛いなどの症状があるときには入浴を控えたほうがいい。また、通常のサウナ同様、脱水になるのを防ぐためにサウナ浴の前後には水分を十分摂取することも大切だ。

 東京都港区在住の重度の心不全を患う男性患者(73)も、低温サウナ浴に2022年10月から6カ月間、週2回通院し、その体調が大幅に改善した一人だ。

「この男性は心機能が28%と著明に低下しており、日常的に息切れや胸の違和感、さらには寝ている際の突然の呼吸苦などに悩まされ、2~3カ月に1回は入退院を繰り返していました。それが、低温サウナ浴を続けた結果、症状はほぼ消失し、心肺機能も向上。今ではフィットネスバイクを使った運動療法を週2回行い、映画館に出かけるなど家族旅行も楽しまれております」(同)

 その男性は2022年10月以降、一度も入院をせず元気に過ごしているという。

 コロナ感染後の後遺症に悩む人たちにも低温サウナ浴は効果を発揮している。コロナ感染後、ひどい倦怠感が続き、休職中だったという男性(48)はさまざまな病院を転々とした結果、同クリニックにたどり着いた。一時は離職も考えていたという。

「この人の場合、低温サウナ浴に週1回通院して2カ月でひどい倦怠感の症状はなくなりました。無事に仕事にも復職でき、いまは出張や残業もできるまでに回復しました。最近は体調が悪くなったときだけサウナ浴のために通院されています」(同)

 老年症候群や介護度の改善が得られたことを踏まえ、杉江医師は低温サウナ浴のさらなる有効活用として、要介護者の入浴サービスの代替手段として活用する提案もしている。

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低温サウナ浴は介護する側も受ける側もプラスの要素が多い