ただ、画像や動画の作り方は教えてくれたけれど、「あとは自分たちでやってください」だったから、西浦研の2人ががんばりましたね。それまでツイッターに投稿したことはないという2人だったけど、のみ込みも早かった。

 私は自分自身のツイッターアカウントを持っていましたけれど、せいぜい200人ぐらいから「いいね」を押されたぐらいの経験しかない。こちらのアカウントは4月20日にはフォロワーが40万人を超えたので、ドキドキしながら運用していました。

――いつまでやったんでしたっけ?

 その年の6月までですね。

――あ、わりと短期間だったんですね。そこで終えるという判断は?

 私です。第1波が終わりましたから。その後も波は来るんですけど、サイエンスの基本的事項は変わらないんですよ。「3密」を見つけた先生方を私は偉い、すごいと思っていますが、それも変わらないんですよ。当時はまだワクチンがなかったので、流れて来る話はどんどん医療のほうの話になっていった。そこには、クラスター対策班の先生のお仕事ってない。

――確かに。

■ ツイッターは合意形成を目的にしてはいけないもの

「なかのひと」をやってみて、プライベートでのつぶやきっていうのと、目的を持って投稿するのは全然違うってわかった。企業さんは、ツイッターを使ったほうがいいなと思いました。とくに、注意喚起のときに。拡散性が高いので。ただ、情報を提供して共有するところまでしかいかないので、合意形成などを目的にしてはいけないものだと認識しています。そこは、いま、研究として検証しているところです。

「新型コロナクラスター対策専門家」のツイートについては、すでに日本語と英語の論文を1本ずつ出しました。日本語論文では使われた言葉の分析をし、英語論文では動画や画像の影響を調べた。結果はとくに目新しいものではないです。でも、日本のツイッターって、欧米と違うんですよね。欧米って、政府の研究所がツイートしても「いいね」ってつかないんですよ。だけど、日本だと、ウィットに富んだものだったら「いいね」がつく。やっぱり、日本人と欧米の人は感覚が違うのかなと思う。

――面白いですね。ところで、食品安全委員会というのは、BSE(牛海綿状脳症)問題などをきっかけにできた食品安全基本法によって2003年から内閣府に設置された委員会ですね。7人の委員は国会の同意を得て総理大臣が任命する。食品の安全について、科学的知見に基づき客観的かつ中立公正に評価するという、重要なお役目を2015年から6年間務められたんですね。

 その前に、リスクコミュニケーションについての専門調査会の委員になったんです。食品安全委員会はリスクコミュニケーションのあり方に関する報告書を2004年と2006年に出しましたが、それっきりになっていた。そろそろ新しいものをと報告書を作るワーキンググループが作られて、座長になったんですよ。報告書は2015年5月に出ました。

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