それに西浦先生にお願いして研究室の若いスタッフを2人出してもらった。彼らは分析の仕事もしていましたけれど、結果を伝える文章や図表も作る担当。何を投稿していくかっていうところは私が考えて、原稿はこの2人に書いてもらい、言葉遣いや画面の作り方については広告会社の若手にいろんなノウハウを教えてもらった。基本的にこの4人でツイッターを動かしていました。ほかのメンバーからは、メーリングリストで意見やアドバイスを随時もらった。
――堀口さんが「コミュニケーションチーム」を作ったわけですね。
はい。ツイッターを始めるとき、厚労省の公式アカウントにすると役所のチェックを受けなければならず、そうするとスピード感がなくなるからまずいとなりました。私は食品安全委員会の委員をしていたので、役所の考え方もわかります。政策的なメッセージを出すと役所からはねられると思った。
クラスター対策班の先生方の特徴は、分析ですよね。いわゆる数理モデルを使った分析をされていて、それは役人にはできないことじゃないですか。分析の結果はサイエンスなので、そのサイエンスの部分を情報提供します、という線引きをしたわけです。
班長は厚労省の人だったので、彼も交えて話し合って、アカウント名は「新型コロナクラスター対策専門家」としました。「班」が入っていないから、これは厚労省の公式なものではないということなんですが、普通の人はそこまで気が付きませんよね。クラスター対策班の専門家から、とにかくスピーディーに情報を出すための工夫でした。
――発信が始まったのは4月3日ですね。途中から、動画や画像も出てきました。
初投稿の当日、「偽アカ」ではないかとリプライ(返信)がついて、あわてて対策班の専門家の方々の動画を撮り、それを投稿していきました。数理モデルの分析に出てくる用語の解説を順に出しましたが、それだけだとあまり読んでもらえない。広告会社の彼が動画や画像のうまい入れ方とか、「ウィットにとんだ投稿にしないとダメ」とか、ハッシュタグ(#)の使い方とかを教えてくれました。彼がいなかったら、厳しかったなと思います。彼は広告の中でもSNSが専門で、拡散させるのが本当に上手だった。