澄んだ空気のもと、朝から温泉を楽しむ。癒やし効果は抜群だろう。日本と比べて、お湯の温度はやや低め。湧出量は毎日60万リットル(撮影/渡邊美穂 取材協力/オーストラリア大使館)
澄んだ空気のもと、朝から温泉を楽しむ。癒やし効果は抜群だろう。日本と比べて、お湯の温度はやや低め。湧出量は毎日60万リットル(撮影/渡邊美穂 取材協力/オーストラリア大使館)

 広大なオーストラリアの地に日本文化が輸入されている。その経済的にも精神的にも豊かな生活にじわじわと食い込むは、温泉、WAGYU……!? AERA 2023年7月17日号より紹介する。

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 500万人超の人口を抱えるメルボルンは、シドニーに次ぐオーストラリア第2の都市。その郊外のモーニントン半島に、日本の温泉に刺激を受けて開業したスパがあり、市民はもちろんのこと、世界各国から観光客が訪れているという。


 どんなものかひと風呂あびてみようではないかと、市内から車を走らせること1時間半。現地に近づくと、道端におなじみのマークが! 温泉だ。


「ジャパニーズ・オンセン・マークです。私は日本のオンセンが、大好きです。特にクサツがいいですね」


 そう笑いながら迎えてくれたのは、「ペニンシュラ・ホット・スプリングス」オーナーのチャールズ・ディヴィッドソンさんと日本人妻のユキさん。


■「クサツ」が生んだ温泉


 チャールズさんは日本を訪れた折に、温泉の魅力に取りつかれ、「温泉による癒やしを、オーストラリアの人にも体験してほしい」と、国内に施設を造ろうと決意。お湯が出る可能性があるという土地を1997年に購入し、地下600メートルまで掘って源泉の存在を確認。ヨーロッパ各国など世界30カ国のスパを視察し、8年ほどの歳月をかけて2005年にオープンした。その後も拡張を続け、今では17ヘクタール(東京ドーム3.64個分)もの広大な敷地に、湯船(プールと呼ぶ)や癒やし施設が70も用意されている。


 私が到着したのは、土曜日の午前8時50分。にもかかわらず駐車場には多くの車が止まっており、既にかなりの人数が湯船に入っていた。


 日本とは違い水着着用による男女混浴で、風呂に入るというよりも温水プールでくつろぐ感覚だが、実際に入ってみるとほのかな硫黄の香りが。


 高台の頂上には、360度の眺望を満喫できる湯船がある。


「クサツの山(本白根山=18年の噴火以降、入山禁止)のようでしょう」(チャールズさん)


 本白根山の頂上は360度パノラマを楽しめる絶景ポイントだが、当然のことながら湯船はない。それを自分のスパで実現したということか。


 また、チャールズさんが日本を訪れたときに感銘を受けた洞窟風呂を再現した湯船もある。

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