みなさんは、自身の親との関係はいかがでしょうか? 子どもの頃には身体の成長を気にかけてもらい、金銭的にも不自由なく育ててもらうなど、一見ごく普通と思える家庭で育ちながら、親と精神的な絆を築けなかったことから「ぽっかりと穴があいたような孤独」を感じている人は多くいるといいます。なかには、「ほかの人たちは親と親密であるのに、なぜ自分は親と仲良くしようとするだけで傷つくのだろう」「親を愛せない自分は冷たい人間なのだろうか」などと自分を責め、罪悪感を抱く人もいるかもしれません。
書籍『親といるとなぜか苦しい:「親という呪い」から自由になる方法』で、こうした悩みを紐解くためのキーワードとして出てくるのが「精神的に未熟な親」という言葉です。他人の気持ちに共感したり感情をコントロールしたりすることに難がある「精神的に未熟な親」のもとで育ったことが、いま自分が生きづらさを感じている原因だとしたら......? そう考えると、非常にしっくりくるものがあり、腑に落ちる人もいるのではないでしょうか。
同書の監訳者で精神科医の岡田尊司氏も述べているように、同書は「親側の課題を客観視することで、自分に非を背負わせるのではなく、その重荷から解放されることに力点を置いている」ところが特徴です。著者で臨床心理学者のリンジー・C・ギブソン氏によると、親の精神的な未熟さを理解することで、「いつまでも変わろうとしない親に合わせるのではなく、本当の自分を大切にして生きていけるようになれる」(同書より)のだといいます。
同書は随所にチェックリストが設けられているので、振り返りがしやすいのもよい点です。「あなたの子ども時代は?」というチェックリストでは、自分が精神的に未熟な親のもとで育ったのかどうかを確認できます。また、精神的に未熟な親を「感情的な親」「熱心すぎる親」「受け身な親」「拒む親」の4つに分類し、親がどのタイプかを判別できるチェックリストもあります。
また、同じ親のもとで育っても、子どものタイプによって問題の対処法は異なるもの。同書ではひとりで状況を変えられると信じる「内在化タイプ」と、他の人に変えてもらおうと考える「外在化するタイプ」の2つを挙げており、自分がどちらのスタイルかを知ることができるチェックリストもあります。これらをうまく活用することで、問題解決に向けてより意識を向けられるようになるでしょう。
同書によると「成熟した大人」とは、「他者と深い精神的なつながりを保ちながら、客観的かつ概念的に考えることができること」だそう。子どもは親を選べないけれど、大人になった私たちは考え次第で、いくらでも強く、自由で、精神的に成熟した大人になれるはずです。同書を読んで、ひとりでも多くの人が親に対する心の重荷を下ろし、自身の人生を歩けることを願います。
[文・鷺ノ宮やよい]