「高校や大学は、仕事に差し支えないように授業を組んで、課題や試験をパスすればなんとかなりました。でも大学院は違いました。すべて自主的に進めなくてはいけない。資料を集めて、読み込んで、分析して論文を書いて、その途中で何度も発表があり、パワーポイントやワードで資料を作って……。もちろん授業もあるし課題も出るし、時間がたりませんでした」
並行して、AKB48の活動と気象予報士の試験対策もした。睡眠時間を削り続け、いつしか精神的に追い込まれていった。
「貧血で学校に行けなくなったときに、『詰め込みすぎたんだ』と思いました。大学院は私が来る場所じゃなかった、私に両立なんて無理だったんだ……と」
大学院をやめようと思いかけたとき、周囲の人が待ったをかけた。
「家族やプライベートの友人たちが励ましてくれました。『続けたら絶対に自分のためになるよ』『今までもがんばれたんだから、大丈夫』って。その言葉に励まされて、とにかく突っ走ろうって思いました」
と言っても、すべてに100%で立ち向かうことはもう無理だった。
「自分の中で『今はこれに集中する』と割り切ることにしました。ライヴの前などは仕事に集中する、気象予報士の試験が近づいたらその勉強をがんばる、終わったら大学院の勉強をする。今できないことがあっても仕方がないと、折り合いをつけることも大事なんです」
場所によって気持ちを切り替えることもできるようになった。
「大学院の勉強は大学の図書館でやり、ダンスはレッスンのときに集中して覚えて、家に戻ったら気象予報士の勉強をする、という感じで、どんなこま切れの時間も集中して勉強する習慣が身についたと思います」
修士2年目のとき、8度目の気象予報士試験を受けた。待ち焦がれた合格通知が武藤さんのもとに届いた。
「気象予報士試験の勉強を優先させたため、大学院に3年通うことになりました(笑)が、うれしかったです。修士論文はとても大変でしたが、それだけに集中できたので迷いはなくなりました」