これまで全国一律だった「水災保険」の保険料が2024年以降、住んでいる地域の水害リスクに応じて差が出るようになる。全国の市区町村をリスクに合わせて5段階に分ける新しい制度が始まるためだ。損保各社でつくる損害保険料率算出機構が6月28日に示した市区町村ごとの区分けの結果をみると、水害のリスクの高い地域が浮かび上がってくる。
水災保険は洪水や土砂崩れなど水害で生じた被害を補償する。通常は火事や盗難など幅広い被害を対象とした火災保険に付帯する形で一緒に契約する。その保険料はこれまで、住む地域に関わらずに全国一律だった。
制度を見直すのは、災害が増える一方で、水災保険に入る人の割合が減ってきたことがある。
洪水や集中豪雨などの被害は、特定の地域に集中することが多い。リスクが低いと判断して補償を外す契約者もいる。しかし、契約者が減れば保険料は値上がりする。住む地域によってリスクは違うはずなのに、同じ保険料では納得感は得られにくい。加入者の不公平感をなくすには、保険料率に差をつける必要があった。
具体的に、新しい制度では全国の市区町村を最もリスクが低い「1等地」から、最も高い「5等地」の5つに分ける。
政令市の行政区や、東京都の特別区も、それぞれ1つの「市区町村」として扱う。水害には、河川の水が堤防を越えてあふれる「外水はんらん」や、市街地などの処理能力を超えた雨によって生じる「内水はんらん」のほか、「土砂災害」などを含むとしている。
区分けにあたっては、国土交通省などの「洪水浸水想定区域図」(洪水ハザードマップ)のほか、同省の市区町村単位の「水害統計」や、防災科学技術研究所の「地形データ」などを用いた。
同機構によれば、水害への補償を含めた火災保険料全体では、1等地はこれまでに比べて平均約6%値下がりする。これに対し、5等地は同約9%の値上がりが見込まれるという。