小学生に聞くと、将来のイメージとして「先生になりたい」という子はまだ多いし、中学でも塾の先生は人気の職なのに、実際の職業選択過程では必ずしも優先されない。
これには、学校がウソくさくなってしまったことも影響しているだろう。18歳までにその正体に気づいてしまうのだ。
杉並区立和田中学校を退任した私が5年ほど客員教授を務めた東京学芸大学は、教師になりたい学生が学ぶ現代の師範学校だ。早稲田大学の教育学部と張り合い、多くの校長を日本に輩出してきた。その本丸の教育学部は、卒業生1000人前後。
「そのうち何人が教師になると思いますか?」
答えは、およそ半分。教授時代、講演で問いかけるたび、聴衆を驚かせていた問答だが、この数字が現実を如実に物語っている(国立大学がそれではまずいだろうと文科省からも指導が入り、現在は6割近くに)。
断っておくが、これは教員を目指す学生がサボっているからではない。努力が足りないのでもない。若手の先生の志が低いという批判も当たらない。もっぱら、構造的な問題なのだ。
不人気なのに大勢採用すれば、応募採用倍率が下がって、新卒採用教員の質が下がる。
これは当たり前の原理だ。この構造を改めるには、(1)再び人気職種に復活させて応募者を増やすか(分母を増やす)、(2)もっと少ない教員で学校を回せるシステムを導入し、採用数を絞る(分子を減らす)しか方法はない。
質が下がっているという現実を認めたくない人が多いかもしれない。プライドが許さないという体制内の人もいるだろう。だったら一度、ベテランの教員に実態を聞いてみることをお勧めする。彼らは言うだろう。「若手の教員はすぐに正解を求めてくる」と。
つまり、トラブったときにどうしたらいいか、と常に正解を訊いてくる若手が多く、彼らは答え一発で指示が欲しいのだ。トラブル解決とは答え合わせではない。ましてやマニュアルなんて存在しない。教育とは正解不正解の次元とは異なることを知らない若手が続々と教員になっている。