保護者の対応に戸惑って、教員のほうが入学式の直後に不登校になってしまったケースも聞く。ある自治体の教育長から聞いたケースは、本当に事実かと耳を疑いたくなった。こんなハナシだ。学校に登校した初日に下駄箱の汚さに呆れて帰ってしまい、あとで親からクレームの電話があったという。それが児童生徒の保護者ではなく、新採教員の親だった、というオチである。

 蛇足だとは思うが、新採教員の学力レベルも下がっていることに、もう一度触れておく。

 ある自治体では、新採教員の出身大学の偏差値が50を切っている事実を知らされた。私としても意外だった。もちろん、入学時の偏差値でひとくくりに比較するのは乱暴だし、大学で学んだ成果を評価しているわけでもない。ただし、「先生というのは、少なくとも普通以上の学力を有する人のことだ」という常識はとっくに崩れているらしい。その事実をタブー扱いにすることは、その現実を踏まえて対処する態度より、よっぽど不誠実でウソくさい!

●藤原和博(ふじはら・かずひろ)
1955年、東京都生まれ。教育改革実践家。78年、東京大学経済学部卒業後、現在の株式会社リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任し、93年よりヨーロッパ駐在、96年、同社の初代フェローとなる。2003~08年、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校の校長を務める。16~18年、奈良市立一条高等学校校長。21年、オンライン寺子屋「朝礼だけの学校」を開校する。 主著に『10年後、君に仕事はあるのか?─未来を生きるための「雇われる力」』(ダイヤモンド社)、『坂の上の坂』(ポプラ社)、『60歳からの教科書─お金・家族・死のルール』(朝日新書)など累計160万部。ちくま文庫から「人生の教科書」コレクションを刊行。詳しくは「よのなかnet」へ。

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