人間は非合理的に選択する時がある。最たる例は恋愛だろう。息子がモテなかったり、娘の性生活が奔放だったり、自身の結婚生活がうまくいかないのには科学的な理由が存在するのだ。本書では性愛に経済学の視点を持ち込むことで、いかに合理性でなく社会通念に囚われた思考をしているか気付かされる。
女性は食事をご馳走されても金額の多寡とセックスを結びつけないが、男性は高額な食事を共にするのならセックスの権利があると判断する。大学内の女性の数が男性よりも多くなると、処女の割合が下がる。働いている既婚女性は金額換算で1250ドル程度のメリットで不倫に走る。
本書に登場する調査結果や試算の一例だが、冷静に考えれば理解できる結果もある一方、驚きの結論である事例も少なくない。インターネットの発達と女性の教育機会の拡大が個人の性愛での振る舞いを変えたにもかかわらず、社会制度は変化を織り込めていない。そのため男女は意思決定を誤る。恋人を探すのにも家庭平和を維持するのにも持っておきたい一冊だ。
※週刊朝日 2015年3月13日号