マイクロソフト社の大株主であるポール・アレン氏。ミリタリー好きとしても知られている
マイクロソフト社の大株主であるポール・アレン氏。ミリタリー好きとしても知られている
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ポール・アレン氏がツイッターで投稿した戦艦武蔵とみられる画像
ポール・アレン氏がツイッターで投稿した戦艦武蔵とみられる画像

 3月3日、フィリピン沖のシブヤン海の海底1000メートルに沈む戦艦武蔵とみられる沈没船が発見された。同型艦の「大和」は東シナ海で1985年に発見されているが、それから遅れること30年。ついに武蔵がその姿を現した、と大きな話題になっている。

 発見者が、あのポール・アレン氏であることも興味深い。さまざまなニュースで触れられているが、マイクロソフト社の創業者の一人、つまりビル・ゲイツ氏の片腕だった人物で、現在もマイクロソフト社の大株主なのだ。資産1兆円を超える、世界でも指折りの大富豪である。

 武蔵を発見した「ヨット・オクトパス号」は、全長126.18メートル、乗組員は元Navy SEALs(アメリカ海軍特殊部隊)のOBで占められており、ヘリポート完備、8人のクルーが2週間暮らすことが可能な潜航艇、無人潜航艇などを装備した、とんでもない船なのだ。

 ポール・アレンは、高校時代からビル・ゲイツの同級生であり、マイクロソフト社の創立を積極的に進めたのも彼だと伝えられている。ソフトウエアの開発などに力を入れるビル・ゲイツに対して、多くの企業との交渉や契約の締結など、営業面で大きく貢献したという。

 だが、マイクロソフト社の設立から8年後、ポール・アレンは突如、退社してしまう。当時、その理由は全く報道されなかった。IT業界で急成長を遂げていた企業は、共同経営者が仲たがいをしたり、創業者が追い出されたり…そんな話題が少なくなかった。当然、ゲイツとアレンの不仲説も流れた。

 真相は後に明かされた。アレンがホジキン病という難病に冒されたことが理由だったのだ。だからこそ、マイクロソフト株の多くを退社後もそのまま保持し続けられた。

 その後ホジキン病という診断は誤診だったことが明らかになり、アレンは1990年にマイクロソフト社に復帰する。しかしながら変化が早いIT業界で7年の空白は大きかったようで、結局第一線に復帰できず、2000年にマイクロソフト社を再び退社してしまう。

 その後のアレンはビジネスの世界から完全に身を引き、投資家に転身する。「ポール・G・アレン財団」を設立し、学術支援やスポーツ支援といった慈善活動への投資を行っている。エボラ出血熱の研究、脳科学の研究、大型類人猿の保護活動、太平洋北西部での文化活動、教育活動の支援など、多岐にわたる活動をしているのだ。

 また、米国プロバスケットボールリーグ・NBA所属の「ポートランド・トレイルブレイザーズ」、米国プロアメリカンフットボールリーグ・NFL所属の「シアトル・シーホークス」のオーナーにもなっている。SF好きであるという彼自身の嗜好からか、SETI(地球外知的生命探査)への出資、ミリタリー好きという側面から沈没船探査にも出資。あのタイタニック号の探査やドイツの戦艦ビスマルクの探査にも出資していたと言われている。

 ポール・G・アレン財団は太平洋北西部での慈善活動にも力を入れており、その中には海洋資源の保護活動も含まれている。今回の戦艦武蔵発見は、そういった活動の中で生まれた“副産物”かもしれない(もちろん、沈没船探査が目的だった可能性も大きい)。ミリタリー好きのポール・アレンのことだ、「そこに武蔵が沈んでいること」は知っていたはず。あわよくばという気持ちがあったことを否定できないだろう。

 世界最大のIT企業の創業者でありながら、誤診によってビジネスの第一線から姿を消したポール・アレン。しかし、彼は悲劇の人ではない。むしろ、その莫大な資産を生かして世のため人のため、そしてなによりも自分が楽しめることを実践している人ではないだろうか。

(ライター・里田実彦)

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