放送作家・鈴木おさむさんが、今を生きる同世代の方々におくる連載『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は、映画「怪物」について。
【写真】トロフィーを持つ是枝裕和監督と脚本の坂元裕二さんはこちら
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監督 是枝裕和×脚本 坂元裕二×音楽 坂本龍一の映画「怪物」が公開になりました。
カンヌで脚本賞を受賞し話題にもなりました。
あらすじを少し説明すると、安藤サクラさん演じるシングルマザーの早織は、ある日、息子・湊のスニーカーの片方がなくなり、けがをしていることに気づく。担任にやられたと答える湊。早織は学校に行き、校長達に事情を話すのだが、双方の言い分が食い違っていく。息子が担任にいじめを受けているのではないかと調べていくと・・・という話なのですが。もうこれ以上は言いません。
この映画は羅生門スタイルと言って、一つの事象を3つの視点から描いています。最初は母親目線で描かれていく息子の物語。次は担任の先生。そして最後は・・・。
見終わって、単純に僕が思ったのは、「超おもしろい」。僕は坂元裕二脚本の作品が大好きです。映画だと「花束みたいな恋をした」も大好きだし、ドラマだと「大豆田とわ子と三人の元夫」や「カルテット」「Mother」「Woman」と名作だらけで挙げていたらキリがない。なかでもフジテレビで放送された「それでも、生きていく」が大好き。
是枝監督と坂元裕二さん。大物同士が絡み合うと、化学反応がうまくいかないことが多いので、どうだろう?と勝手に思っていましたが余計な心配。
坂元裕二脚本を是枝監督がしっかりと“是枝味”で撮りあげるというプロとプロの技。
ずっと最初から緊張感が走り続ける。
坂元さんのインタビューを見たら、この物語の着想は「車を運転中に赤信号で待っていたら、前にトラックが止まっていて、信号が青になってもしばらく動かず、クラクションを鳴らしたところ、それでも動かない。ようやく動いたら横断歩道に車いすの方がいて、トラックはその車いすの方が渡りきるのを待っていたんです。トラックの後ろにいた自分にはそれが見えなかった。クラクションを鳴らしてしまったことを後悔している」と。さらに「自分が被害者だと思うことには敏感だが、加害者だと気付くのは難しい」と。それを聞いて本当にそうだなと思った。