「中央銀行は債務超過になったからといってオペレーションを続行できなくなるわけではありません。ただ、日銀が赤字になれば毎年、国庫に納めていた約1兆円が支払えなくなります。国にとってはそのぶんの税外収入が減ることを意味します」

 黒田東彦前総裁時代に膨れ上がったバランスシートを元に戻すには、国債やETF(上場投資信託)などの資産を売却する必要があるわけだが、相当慎重にゆっくり売却しないと市場は大混乱に陥ってしまう。

「まあ、10年では終わらないでしょう」

 仮に、日銀がバランスシートを調整せずに金利を引き上げ、債務超過の状態でオペレーションを続ければ、金融市場における「円の信認」が損なわれる危険性がある。そうなれば、さらなる円安をまねき、輸入品の価格上昇による物価高に結びつく。

「そのようなリスクを避けるためにも日銀は早い段階で、本当はバランスシートの調整を始めなければいけないわけです」

■バブルを止めるのは米国か

 藤田さんは今年度末までに、日銀がバランスシートの調整に着手すると予測する。ただ、利上げについては政治的な摩擦や利払いによる損失リスクを避けるため、今後しばらくは消極姿勢を見せると考える。

「そうなると、どうしても株や不動産にお金が流れ込みやすい状態が続く。日銀には1980年代にバブルをつくってしまったという反省があるはずなんですけど……。今はその可能性が出ています」

 近い将来、日経平均が下落に転じるとすれば、その原因の一つとして考えられるのは米国の景気後退だ。日本企業の収益が悪化し、日本経済にも悪影響を及ぼす。

「いずれ米国は景気後退に陥るでしょう。当然のことながら、大幅な利上げによって経済の減速感は出ています。ただ、今は景気後退という感じでは全然ありません。景気後退までには時間がかかるという見方をしています」

 一本調子の上昇とはならなくても、しばらくは日経平均の上昇が続きそうだ。

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)