そして、11月21日に50万円、同月23日に80万円の計130万円が山本被告の口座に送金された。大久保被告は女性に、「山本直樹」と偽名を名乗り、口座番号を伝えていた。
大久保被告は、
「過去のDMは消してください」
と11月24日に、女性にダイレクトメッセージを送った。
女性への嘱託殺人の計画を「仕事」と表現していたという両被告。山本被告は女性からの送金を確認すると、
「振込額が高額であり、早期に動かねばならない仕事であることを自覚した」
などと大久保被告に伝えた。130万円全額を自己の手掛けていた事業の運営資金とクレジットカードの引き落としなどに使ったとしている。
その後、計画は一気に進む。
11月26日、大久保被告は山本被告に、
「京都へ行けそう」
とメールを送り、犯行日は30日の夕方と決まった。
30日、2人は新幹線で京都入りして女性宅に近いホテルで合流すると、午後5時21分に女性宅のインターホンを鳴らし、知人という名目でワンルームマンションの部屋に2人で入った。その後、2人は20分足らずでマンションから立ち去るという“迅速な”行動を取った。
検察側は、
「山本被告が(台所と寝室の間の)ドアの前に立ち塞がるなどして、24時間常駐している介護スタッフの行動を見張り、大久保被告が女性に薬物を注入して犯行に及んだ」
と2人の役割分担について説明した。
2人が帰った後、女性の部屋に入った介護スタッフは、息をしていない女性に驚き、主治医らに連絡。女性は救急搬送されたが死亡が確認された。女性の死因が急性薬物中毒であったことから、犯行が発覚したという。
犯行直前、大久保被告は山本被告に犯行を示唆するようなメールを送信していた。
「こんな本書いている。医療に紛れて殺害するマニュアル。安楽死したい人には売れる」「在宅医療という無法地帯、家なら(安楽死は)やりたい放題、警察は病死に興味がない」