昨年9月に「環軸椎亜脱臼(かんじくつい あだっきゅう)に伴う脊髄症・脊柱管狭窄症」であるということがわかり、現在は入院してリハビリ中の天龍源一郎さん。今回は入院先から主治医の許可をもらいながら、大相撲出身のレスラーにまつわる思い出を語ってもらいました。
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俺を含めて、大相撲出身のプロレスラーは大勢いるが、相撲取り上がりで一番すごいと思ったのは「上田馬之助」だ。相撲での番付は序二段だったけど、そこからプロレスであれだけの実績を残した人は珍しいよ。相撲ではパッとしなかったけど、プロレスに入ってからは悪役に徹底して、キャリアを重ねるのはなかなかできることじゃない。
俺が知る限り、馬之助さんは相撲出身の中では最高のプロレスラーだ。彼はいつも一切隙を見せず、素人の前でも「プロレスラーはすごいんだ」という姿をあえて演じていたように思う。例えば、ビールをイッキ飲みした後でグラスをバリバリ食べたりね。
俺も「馬之助ができるんだったら俺もできるだろう」ってマネをしてグラスを食べてみたことがあるんだけど、意外とどうってことなかったよ。女房には「やめろ!」と止められたけど(笑)。最初はジャリジャリしたいやな感触だったけど、飲み込んでしまえばどうってことない。お通じも問題なかったからね(笑)。
馬之助さんは見た目はレスラーっぽくないんだけど、リングの中では強いし、実力は相当なものだったよ。でもお客さんにはその実力がなかなか伝わらなくて「だったらアントニオ猪木、ジャイアント馬場の敵役(かたきやく)に回ってやる!」という発奮があって悪役に徹底したんじゃないかな。相撲上がりで悪役をやっていたのも馬之助さんくらいだろう。日本人であれだけアントニオ猪木さんと戦っていたのもすごいことだよ。
馬之助さんほどにはトップは取れなかったけど、グレート小鹿も全日本プロレスでは大熊元司さんと極道コンビで名を馳せたよね。あのころの小鹿さんはみんなから怖がられていたけど、選手会の副会長になったあたりからずいぶん丸くなったね。