名古屋入管。ウィシュマさんが亡くなった後も、自殺未遂者が出ているという。5月末時点で68人が収容されている
名古屋入管。ウィシュマさんが亡くなった後も、自殺未遂者が出ているという。5月末時点で68人が収容されている

 6月上旬、大阪入管(大阪市)で常勤の女性医師が、「酒に酔った状態で収容者を診察していた」疑いが表面化したのだ。

 女性医師は今年1月、まぶたが腫れて足取りがおぼつかないなど酩酊状態で出勤し、診察開始後も言動に不審な点があった。呼気検査でアルコールが検出された。女性医師は、ウィシュマさんが死亡したことを受けた改善策で昨年7月に、新規採用された医師だった。

■いかにして追い返すか

 大阪入管によれば、現在女性医師は診察業務から外れ、非常勤医師4人が診療にあたっているという。しかし一体なぜ、酒酔い状態で診察するという信じ難い事態が起きたのか。大阪入管に問いただすと、担当者は、

「事実関係を全体的に把握している最中なので、コメントを控えさせていただく」

 とだけ答えた。

 命を軽視する事態が、入管で続くのはなぜか。

 STARTのスタッフで本部運営委員の千種(ちくさ)朋恵さん(22)は言う。

「医師自身の問題もあると思います。だけど、入管は、収容者の命と健康を守る責務を果たして初めて収容が認められる『収容権』が与えられている組織です。それにもかかわらず、いかにして収容者を国外に追い返すかという考え方が根底にあり、そのため人命を軽視するような問題が繰り返されているのだと思います」

(編集部・野村昌二)

AERA 2023年7月10日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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