AERA 2023年7月10日号より
AERA 2023年7月10日号より

 名目GDPは2022年度に約562兆円だった。牧野さんは継続的な賃上げによる内需の回復や資源価格のピークアウトから「日本経済は順調に回復していく」と予想。GDPは23年度に前年度比3.7%、24年度に2.3%程度の成長を経て25年度4~6月期に600兆円台に乗せると推計する。1株当たり利益は3割増え、4万400円が理論株価だという。

■「再評価説」に違和感

 一方、ニッセイ基礎研究所の前山裕亮さんは「日本固有の要因で株価が上がったと即断できません」と、日本企業の「再評価説」に違和感を覚えている。

 年初からの上昇率は旧東証1部銘柄を網羅するTOPIXの21%に対して米S&P500指数は14%と、TOPIXの方が大きい(6月20日現在)。しかし、円換算でS&P500は22%高なので、日本株は米国株に連動して上げただけにも見える。TOPIXとS&P500は22年以降似たような動きを続けており、「足元の日本株高も円安と米国株高である程度は説明できます」(前山さん)。

 その上で前山さんは「10%程度なら株価は簡単に変動します」と注意喚起する。足元の日経平均では3千円超の値幅だ。

 米国は連続利上げの副作用で年後半の景気停滞が懸念される。しかも、1ドル=140円を超えて円安・ドル高が進行してきたが、前山さんは円安継続より円高に転じる可能性の方が高いとみている。「景気悪化で米国株が下げ、為替が円高方向に反転しても日本企業の業績が底堅ければ日経平均は2万9千円で下げ止まるかもしれません。しかし、減益となれば20%安の2万6千円付近まで下げる恐れがあります」。円高や米国株安に見舞われてもしぶとく値を保っていれば、日本株に対する世界の投資家の見方が変わったと言えそうだ。(経済ジャーナリスト・大場宏明)

AERA 2023年7月10日号