「コンビニ百里の道をゆく」は、53歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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日本のコンビニエンスストア。その可能性を海外の投資家はどう見ているのか。5月上旬、4年ぶりの海外投資家との面談で、イギリスに行ってきました。その反応は大変興味深いものでした。
皆さん日本が好きで旅行でも来られているので、コンビニのことはよくご存じ。ただ、投資家の視点からその成長性はというと、もう成長しきったのではないかという見方がコロナ前には出ていました。
しかし、コロナ禍の巣ごもり生活において、遠くのスーパーにわざわざ行くよりも近くのコンビニで日常使いのものは揃えたいという需要が高まり、それにあわせてコンビニの商品ラインアップが変わり、売れるカテゴリーも変わっていきました。
またコンビニが始めたデリバリーは、通常のネット通販よりも早く届く、いわば「即時配達Eコマース」になっている。こういった変化とチャレンジは海外投資家の目から見ても「グッドサイン」だねと非常に好意的。そのモデルを中国や東南アジアのローソンでも展開していける可能性も大いに感じてくれていて、私たちへの期待が大きくなってきていることを感じました。
今回の旅は、最初に夜遅くにエディンバラに着いて翌日の早朝から面談開始。昼には特急列車に乗って2時間半揺られてヨークに行き、駅の前のホテルで別の投資家と面談してまた列車に飛び乗り、ロンドンに行って、翌朝また面談と強行軍。せっかくイギリスまで来たのに、と思いました(笑)。
特急列車で印象的だったのが、満席の車内で誰一人マスクをしていないこと。今回会った投資家たちもしていなかったし、マスクの話題にさえならない。「ずいぶん前からもう、僕らはノーマスクですから」と。
マスクのない日常。日本も近々こうなるといいな。そう強く感じさせられました。
竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
※AERA 2023年7月10日号