「コンビニ百里の道をゆく」は、53歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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国会で先日、「LGBT理解増進法」が成立しましたね。ローソンでも、5月から、LGBTQの方たちに対する施策を、いくつか導入して進めています。
きっかけは、社員からの声でした。ローソンは婚姻関係にある夫婦への福利厚生はしっかりやっているけど、LGBTQのパートナーと暮らしている人はサポート対象になっていない。
ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DEI=多様な人材を受け入れ、公平に、能力を発揮させる考え方)を率先して推進しているローソンこそ、考えていただけないか、というような要望をもらったんです。
はっとしました。まだまだ気づけていない点がたくさんあると。
「アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)」という言葉がありますが、DEIが大事だと表面では言っても、アンコンシャスのままではなかなか本当の解決には結び付きません。
意識的にLGBTQの方たちが置かれている状況についてアンテナを高くしていかないと、世の中を改善していけないのではないかと痛感しました。気づかせてくれた社員に、感謝しています。
社宅への入居は原則として社員の配偶者、子ども、父母について認めていたのですが、「同性パートナーとして会社に申請し認められた場合には家族として入居できる」と今回変更しました。
また、LGBTQの当事者、もしくは、相談を受けた社員や加盟店のオーナーさん、従業員の皆さんが、匿名でメールできる外部相談窓口を設置。LGBTQに関する理解促進のため、外部の講師や当事者の方を招いてのセミナーも開催していくことにしました。
本気で変えていくために、能動的に学んで、行動を起こしていく。そんな会社にしていきたいと考えています。
竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
※AERA 2023年7月3日号