※写真はイメージです(Getty Images)
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 停戦の兆しもなく、長期化するウクライナ戦争。人類最高の頭脳とも呼ばれるエマニュエル・トッド氏は、ウクライナ戦争に関しては重要な五つのファクターがあるという。ロシア、中国、アメリカに加えて、ポーランドとドイツが重要であるという。その真意をジャーナリストの池上彰氏との対談をまとめた『問題はロシアより、むしろアメリカだ 第三次世界大戦に突入した世界』(朝日新書)より一部を抜粋、再編集し、紹介する。

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池上彰 ウクライナでの戦闘は、まだまだ続きそうなのか、どうなのか。本当に予測は難しいところですけれども、トッドさんはいま、どのようにご覧になっていますか。

エマニュエル・トッド 個人的にウクライナ戦争に対しては、非常に絶望しているのですけれども、それは置いておくとして、何が重要かというと、主要なファクターが五つあると考えています。

 一つ目は、ロシアですね。

 いま自信を持って、自分のリズムで戦争を展開しているという、ロシアという国があります。ただ、合計特殊出生率が「1.5」にとどまり、5年以内に人口ピラミッドに大きなくぼみが生じるという人口問題を抱えています。

 その点においても、ロシアは5年以内にアメリカとNATOに勝利する必要があると私は考えています。

 二つ目に中国です。

 中国はアメリカやNATOに対して、ロシアと同じような関心を持っているんですけれども、この戦争がある意味よい機会となり得るわけですね。

 つまり、この戦争はアジアの人々全体にとっても、「実はアジアで起きたかもしれない戦争」が避けられて、いまはウクライナで起きている、というように見ることもできるわけです。

 そうすると、アジアの人々にとってもこの戦争はよい機会、というように見ることもできます。想像もしていなかった遠いところで、アメリカと中国との対立が行われている、ということになる可能性があるというわけです。

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エマニュエル・トッド

エマニュエル・トッド

エマニュエル・トッド(Emmanuel Todd) 歴史家、文化人類学者、人口学者。1951年フランス生まれ。家族制度や識字率、出生率に基づき現代政治や社会を分析し、ソ連崩壊、米国の金融危機、アラブの春、英国EU離脱などを予言。主な著書に『グローバリズム以後』(朝日新書)、『帝国以後』『経済幻想』(藤原書店)、『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』『第三次世界大戦はもう始まっている』(文藝春秋)など。

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