「暑い時期は汗をかくので体内の水分量が減り、血圧が下がります。また、曇りや雨の日は低気圧の影響で副交感神経が優位になりやすく、体の不調が表れやすくなります。これは気圧が下がることで空気中の酸素濃度が低下し、活動性を抑えることが原因と言われています。さらに、精神的な要因を挙げると、4月はまだ新学期が始まったばかりなので気を張っていますが、5月を過ぎると疲れやストレスを感じる子どもが増える傾向にあります」

 そのため、対策としては水分や塩分を摂取する、軽い運動をするといった方法が有効だ。

「水分は1日1.5リットル、塩は1日10~12gを目安に摂取しましょう。運動は1日15分から30分程度の散歩で十分です。また、起立性調節障害は朝が一番つらいので、血圧が急激に下がらないよう、頭を下げた状態で起床することも大切です」

 病院では薬物療法として血圧や心拍数を調整する薬などを処方するが、前提としてこうした生活習慣の改善が必要となるようだ。個人差はあるが発症後1年で約半数、2~3年後には8割の人が回復するという。

■家族の寄り添いが何よりの薬

 山下医師によると、神経質で周りに気を使う性格の子どもほどストレスを抱え込み、起立性調節障害になりやすい傾向がある。そして、この病気で最も障壁になるのは、家族の理解が得られないことだと山下医師は言う。

「起立性調節障害は午後になると体調がよくなり元気なことも多いため、『怠けている』と誤解されやすい病気です。実際に、来院されたときにはすでに家族関係が悪くなっている患者さんも大勢います。しかし、起立性調節障害は自分の意思ではコントロールできません。頭ごなしに叱るのではなく、『病気である』という認識を持って、お子さんのつらい気持ちに寄り添ってあげてほしいと思います」

 かかりつけの小児科へ行き、検査をすることで病気の有無は判明するだろう。しかし、起立性調節障害の疑いがなかったからといって問題はないとは言い切れない。体の変化には子どものSOSが隠れているもの。普段と違う言動に気付いたら、まずは安心感を与えてあげることが大切なようだ。

(文/酒井理恵)

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