※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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マスク着用の緩和で、ある歯科医院では歯のホワイトニングの予約が急増しているというニュースが流れていました。確かに鏡を見たとき「にーっ」と笑うと、歯が黄ばんでいるのが気になります。そもそも歯はなぜ黄ばむのでしょうか。コーヒーやワインの飲みすぎは原因になるのでしょうか。歯みがきで落とせないのはなぜなのでしょうか?歯周病専門医の若林健史歯科医師に聞いてみました。

【写真】歯周病専門医の若林健史歯科医師

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 赤ちゃんのときはすき通るように白かったはずの歯が、大人になると黄ばんでしまう。その主な原因はステイン(着色汚れ)です。食べ物や飲み物には天然の色素や着色料を含め、さまざまな色素が含まれています。この色素が歯の表面に沈着し、色がついてしまうのです。

 歯の表面のエナメル質(白い部分)はツルツルに見えますが、97%はハイドロキシアパタイトというリン酸カルシウムの結晶の集まりです。電子顕微鏡でエナメル質を見ると、すき間がたくさんあるのがわかります。

 ステインがエナメル質の表面にとどまっているうちは、歯みがきで取り除くことができます。ただし、プラーク(歯垢)と同じように、完全に取り除くことは難しいのが現状です。

 一方、私たちは毎日のように、飲食をしています。このため、ステインは次々とエナメル質に付着します。こうしているうちに付着したままのステインが、エナメル質のすき間から少しずつ歯の奥に入り込み、歯の表面だけでなく、中まで黄ばんでいくのです。

 とくにステインの原因になりやすいのがコーヒーや紅茶、赤ワインやカレーなど、濃い色の飲み物や食べ物です。こうしたものを取る頻度の高い人は、そうでない人に比べ、明らかに歯が黄ばみやすいです。赤ワインを毎日飲んでいる人の中には、20~30代でも歯が茶色くなっていて、驚くことがあります。ステインは歯ブラシでは落ちにくい歯の根元につきやすく、この部分を中心に色がついています。また、たばこのヤニ(タール)もステインの主たる原因です。ヤニはその多くが歯の裏側に付着していますが、これはたばこを吸って吐き出すときに、煙が当たる部分だからです。

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歯の表面のステインに対しては、クリーニングが有効