■NATOを潰す目的
世界的なアクター(役者)の一つとして、中国はできるだけ、機会があるたびに、アメリカに「取って代わろうと」しているのではないか、と言えると思います。「真の和平案」というのはそこにはないと、私は考えます。
中国とロシア、この同盟関係の目的は、NATOを潰すことですね。そしてそれもやはり、アメリカの産業界が非常に弱くなっているというようなことも、すでにわかっているからなんだろうと思います。
私の個人的な、ちょっと悲観的な見方をお話しすると、ロシアと中国は、いまこの戦争をやめることに対して、全く利益がないわけですね。続けることにこそ意義があるといいますか。逆にアメリカは、自分のしかけた罠にハマってしまったような状態にいます。
戦争が近い将来、どうなっていくか。ロシアと中国に関しては人口的な面、人的資源の面で、だんだんと人口が減っていってしまうという状況が、あるとき来るわけです。
ロシアの人口ピラミッドを見てみると、だいたい5年後に、人口が減るという時期がきます。そして、これから10年ぐらいで中国も、労働人口の30%が縮小すると言われています。
なので、ロシアや中国にとってはいまが、アメリカのヘゲモニー(覇権)を崩壊させるチャンスといいますか、いちばんよい時期だというわけなんです。
(構成/編集部・小長光哲郎、通訳・大野舞)
※AERA 2023年6月19日号より抜粋